国会リポート 第31号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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お盆休みが明けると世の中が一挙に秋の政局へと動いていきます。9 月 20 日の自民党総裁選挙に向けて、党内各派は最終的な意思決定を迫られてきます。派として候補者を出すのか、あるいは他派の候補者を推薦するのか、はたまた自主投票にするのかという選択です。

現在意思表示をしている候補予定者は、小泉総理以外に、藤井孝男元運輸相、笹川堯衆議院議員、熊代昭彦衆議院議員、そして亀井静香元政調会長の 4 名です。高村正彦元外相も色気を示していると伝えられていますが、少数派閥 (16 名) の長としてはどうしても他力本願にならざるを得ず、自身から積極的な仕掛けができないようです。言わば、みんな傷み分けで、第3 の候補として白羽の矢が立つのを息を殺して待っている状態です。

堀内派の堀内光雄総務会長は条件付き小泉支持を打ち出していますが、早すぎる意思表示に派内実力者の古賀誠議員からけん制が入っています。古賀氏にしてみれば総裁選後も一定の影響力を誇示していたい。しかし、その前提として自民党が与党から外れてしまっては元も子もない。その意味では選挙に勝つ顔という要素が重くのしかかる。一方で野中広務元幹事長は政治的師であり、彼を孤立させてしまうことは現時点では避けたい。その両者の中で思い悩んでいるのが現状です。そうした点を総合的に分析をすれば、4 派統一候補として高村擁立への動きが水面下で始まる可能性は大きいと見るのが妥当だと思います。

一方の小泉総理は、青木参議院幹事長や森前総理の、何とか穏便に小泉再選で取りまとめたいという思いを無視するかのような言動が目立ち、小泉再選派をはらはらさせています。元々小泉総理には派閥権威主義という発想がなく、小泉改革を支持するものは派閥の枠組みを越えて自分の下へ集まれ、という強い思いがあります。総裁選で再任されれば、それが一番。再任されないなら、されないで結構。「改革断行の手だては国民の中にあり」 という思いが、心の隅でちらちらと燃え続けているようです。

 

今週の出来事「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら…

 

最近テレビ、ラジオや雑誌の取材が増えてきました。特に政界ドキュメント作家の大下英治さんからよく取材を求められます。政界の裏事情をどこまで話してよいか、話し過ぎれば問題が起こるし、全く話さなければ読み物としての面白みやリアリティーに欠けるし、悩ましいところです。ただ、私の見通しているとおりに政界が動いているとの評価は、大下氏だけではなく、各社政治記者から頂いております。

でも政治の本当の醍醐味は、政局が如何に動くかの解説でなく、如何に動かす当事者になるかということですよね。  大下英治 『政界同時進行小説』 を近日、甘利明ホームページに掲載いたします!