国会リポート 第420号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 アメリカ赴任から帰国した人達がコロナ対応で2週間の自宅待機中に日本のテレビ報道に衝撃を受けたと訴えられました。「強制措置も無いのにどうして日本はコロナをあんなに巧くコントロール出来るんだ?」あらゆるアメリカ人から連日問われていたのに、帰国後のテレビ報道が「ドイツは立派、日本はなっていない」一色だからだそうです。人口は日本の3分の2にも拘らずドイツの死者数は日本の10倍です。強制措置やプライバシー等私権制限を徹底した中国、シンガポール等の国を除けば日本は他の先進国の数十分の1の犠牲者数であることは事実です。外国の評価と国内の評価のギャップにカルチャーショックを覚えると言われました。マスク、手洗い、上履き、入浴文化、政府呼び掛けへの自発的協力、日本の国民性が貢献していることは事実ですが、政府の努力ももう少し評価してもらえたらという思いです。

 河野大臣から私のデジタルチームの要員である小林史明君をワクチンチームに貸してほしいという依頼があった関係で、大臣や小林君が経過報告に来ます。ワクチンを誰がいつどこで何という種類を打ったという情報、接種間隔をあけている間に転居したという情報、また副反応の管理をしたり等複雑なデータ管理が必要なため、自治体の予防接種管理システムと国によるワクチン供給システム等々、密接に連携させていかなければなりません。こういう時にこそ、マイナンバーが威力を発揮するときです。従来からある自治体の予防接種システム、医療機関とをつなぐ厚労省のV-SYS(ワクチン接種円滑化システム)に加え、一人一人の複数回接種を管理をしていくためには個人番号を使った、接種情報管理が不可欠です。3つの体制を緊密に連動させることで、事故なく接種が進みます。ここでも早くからマイナンバーをベースに全てのシステム連携をしていればとの反省が浮き彫りにされます。マイナンバー制度を導入するにあたって幅広く利便性をと主張した政府与党と、リスクがあるから出来るだけ限定してと主張した野党のせめぎ合いは、マイナンバーシステムをデジタルトランスフォーメーションのベースとするにあたってどちらの主張が正しかったか、もう一度検証されるべきです。

 そうこうしているうちに先般、シンクタンクの関係者が私のところに来て、3つを連動させてもまだ落ちがありますと進言してきました。接種予約をする際にそのことだけで絶対に完結はしない、不安があるからあれこれ問い合わせが延々と続く。予約を受け付ける現場はその対応に追われ、電話は四六時中話し中の状態になる。少し考えただけでこういう事態が起きるという問題提起でした。その当事者を小林ワクチン担当と引き合わせ対処を要請しましたが、DXにおいては定型の質問については模範解答で答えてくれるチャットボット(AIロボット)の配置等この種の危機管理システムの設計図も構築する機会になります。 もう一つ興味深い報告はこの種のシステムを組む時に民間のエキスパートをと提案があっても、1,500万円程度ではトップクラスのデジタルエンジニアは来そうもないということが指摘されますが、小林君の報告によれば行政組織に不案内な人達よりも行政組織がわかる中堅若手にIT知識のブラッシュアップをさせたほうが限定的な作業では効率が上がるというものでした。コロナ禍は惨状を世界にもたらしていますが、現代社会の脆弱性を全て洗い出す機会にしなければ犠牲者は浮かばれません。

 

 

今週の出来事「松山千春か!?」

 38年の政治活動の中で初めて、屋外ポスターをモノクロで作りました。カメラマンは新進気鋭の若手の人で、私を見てどうしてもモノクロ写真で撮りたかったということでした。初めて笑顔を作らないポスターにもなりました。

 政治家はいかに笑顔でいかに若々しく見せるかをポスターの基本にします。それと真っ向から対立するコンセプトで出来上がりました。

 選挙区内に張り巡らせてみると今までで一番評判がいいものになりました。自分としては今までよりかなり老けたイメージになったと感じましたが、カメラマンの意図したところは重厚な政治家像でした。確かに戦後の日本の復興の中心的役割を果たした政治家は皆重厚でした。

 先般党内の若手議員達から「先生の目標とする政治家は誰なんですか?」

 一呼吸間をおいて「俺かな?」(笑)