国会リポート 第369号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

総 覧

 消費税引き上げと同時にクレジットカードやQRコードを使ったいわゆるキャッシュレス決済で商店街で買い物をすると、5%ポイントが消費者に還元される方向で検討が進められています。このフレーズが若干の誤解と困惑を生んでいます。商店の方々はカード手数料が3%や4%から5%に引き上がるのではないかとの困惑です。利用手数料が引き上がるわけではなく、10%になった後の一定期間、5%分のポイントが決済会社を通じて政府の負担で消費者に還元される仕組みです。その際、お店が払うカード手数料は3.25%以下の手数料のカード会社のみ適用される方向で、むしろお店が払う手数料は軽減されます。一方、マスコミの一部からは現金の場合は消費税10%を払い、キャッシュレス決済の場合は5%分がポイントとして還元されるという仕組みは軽減税率と合わせて混乱に拍車をかける。なぜこんなことをするのか理解に苦しむというものです。総理が自ら消費者への還元分を消費税が上がった分の2%ポイントではなく、5%ポイントにするべきと言った意味は、日本にキャッシュレス決済文化を早く定着させるべしとの政策判断からです。

 現在、世界はデジタル革命の真っ只中にあります。経済システムをいち早くデジタル化した国があらゆる主導権を握るとの認識のもと、大競争に入っています。中国では13億の人口の内、既に7億人が現金を使わない生活に入っています。スーパーで買い物をする時も、タクシーに乗る時も、レストランやホテルで支払いをする時も、電車に乗る時も、はては物乞いにお金を恵む時ですらスマホによる電子決済です。

  現金による決済よりも、電子決済の経済の方が数十倍のスピードと正確無比さで進展していきます。レガシーシステムのアナログ決済とあらたなデジタル決済とでは勝負になりません。その際、極めて警戒しなければならないのは「決済データは、システム運営者に全ての情報が集まる。」ということです。どこで、誰が、いつ、どのぐらいの支出をしたか、毎日、何十億何百億という決済データがシステム運営者の元に集まります。このビッグデータをAIによって解析することによりあらゆる嗜好、新たなニーズ、将来予測、全てが導き出されるのです。そしてそれは個人情報と企業情報の塊から導き出されるものです。センサーから集めたデータを分析することにより、最適なオペレーションシステムが導き出されるように、個人情報から集められたデータの解析があらゆる人間の行動を解析していくのです。だからこそ個人情報保護が必要であり、集めたデータが特定の国家に利用されないよう、セキュリティーシステムが必要になるのです。

  中国はアリペイやウィチャットペイのような決済システムを個人情報収集システムとして設置し、全ての情報を国家に集めます。このシステムが日本に入ってしまえば、全ての日本人の個人情報は中国政府のもとに集められてしまいます。アリペイはシステムを導入するお店やこれを利用するユーザーに莫大な資金をばら撒き、一挙に加入率を引き上げました。今回、PayPayという電子決済システムがシステム利用者に100億円分を還元すると謳っています。アリペイのやり方をコピーしたような導入モデルです。中国との関係を指摘する人がいる以上、キャッシュレスシステムに参加する事業者は日本国内で得た日本人の情報を決して国外には持ち出さないと誓約し、それを保証するシステムを構築しない限り参加させるべきではありません。合わせて匿名化のためにもマイナンバーカードを一刻も早く普及させなければならないのです。丸裸のまま外国資本のシステムに飲み込まれることは極めて危険です。

 

今週の出来事「最強のアナログ政治家?!」

  パソコンやスマホのハッキングや盗聴が横行しているので、私のスマホには厳重なセキュリティアプリがインストールされています。

 すると『このコンテンツには危険性があります』という警告が時々表示されます。セキュリティレベルを上げるほど警告が現れるとすると、最終的には『このパソコン(スマホ)はこれ以上使用しないでください。』という警告になるんじゃないの。

 あっ、やっぱり桜田大臣は正しいじゃん。使わない(使えない)のが一番安全だ(笑)。