国会リポート 第342号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

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 いよいよ10日から衆議院総選挙がスタートいたします。北朝鮮情勢が緊迫しているこの時に、選挙で政治空白を作るとは何事だ、と野党は主張します。ならばいつなら政治空白を作っていいのか。先に行けば行くほど北朝鮮情勢は緊迫度を増し、より政治空白は作れなくなります。衆議院任期残存期間は一年強、そして北朝鮮の核ミサイル完成までのタイムリミットが十カ月。両者がほぼ重なっているため、先に行けば行くほどリスクは高くなります。この期に及んでも圧力より対話を、という人がいます。過去長きにわたる対話や人道支援が何をもたらしたかは明らかです。結論から言えば、北朝鮮に核ミサイル開発の時間と資金を与えただけというのが現実です。
 
 北朝鮮はなぜ国際社会を欺いても自国国民を犠牲にしても核ミサイル開発を放棄しないのか。理由は一つです。通常兵器では100年かけようとアメリカ、中国、ロシアの様な軍事大国にはとうてい対抗できないからです。戦闘機や戦車や砲門や軍人の数では韓国を凌駕しても「装備は古く、弾薬は足らず、燃料もない、食料もなくて兵隊の士気も低い。」軍事大国と互する一発逆転の安上がりな方法は、核ミサイルを持つしかないからです。こちら側の対話の前提は、核ミサイル開発を放棄すること。向こう側の対話の前提は、核ミサイル保有国として認知をすること。野党の中にある「無条件の対話」こそ、正に北朝鮮の代弁となりかねない落とし穴です。彼らには完成させるための資金と時間が必要なのです。完成に近づけば近づくほど放棄させることは難しくなります。
 
 私が、春先から主張している様にエネルギー(石油)と開発資金を断つしか道はありません。アメリカと連携をとりながら韓国のポピュリズムを抑え、中国・ロシアに決断を促す。それが出来る政権でなければ北朝鮮は核ミサイル完成をし、小型核拡散の恐怖と直面する世界がやってきます。各地で発生する爆弾テロが核テロに置き換わる事は絵空事ではなくなるのです。
 
 総選挙で問われるべき2点目は、消費税の使途の若干の変更です。現在の出生率が将来に亘って続けば2,050年には1億2700万人の日本の人口は1億を切り、2,100年には5,000万人を切ると推計されます。そうなれば各社会システムは、維持困難になります。消費税を子育て支援に加算していくことは子供を産み、育てる受け皿を整備し保護者の負担を減らことを通じ、少子化の改善に貢献します。少子化を食い止めることは将来の社会保障基盤を支えていく人員を増やす事になります。すなわち、子育て支援は未来への投資なのです。
 
 3点目は、アベノミクスの是非です。効果が無いからやめてしまえという野党と効果が出ているから次のステージに進もうという与党との政策論争です。この4年間で名目GDPは、490兆から540兆に拡大し、過去最大値になりました。失業率は、4.3%から2.8%に。有効求人倍率は、0.86倍から1.52倍に。企業収益は、年間48兆円から75兆円へと飛躍的に拡大しました。内部留保や保有現預金も過去最大を更新中です。
 
 マクロの経済指標は、どれをとっても過去最高ですが国民一人一人の景気回復実感は、まだら模様です。2%の賃上げを4年間実現しましたが、上がった消費税と社会保険料負担を差っ引けば、手取りが増えた実感は乏しいのが現状です。内部留保は、増え続ける一方で労働分配率は下がっています。賃上げを3%以上にし、下請け発注代金の適正化に努め、ITやAI(人工知能)の設備投資を思い切って進めていく。賃金を上げ、モノやサービスの消費を増やし、GDPを拡大しそれがさらなる企業業績に繋がる。
 
 賃金上昇と企業業績の向上の好循環が廻り始める事がアベノミクスのセカンドステージです。アベノミクスには、サードステージまであります。イノベーションがメイドインジャパンの製品やサービスを世界に連続的にデビューさせていくこと。戦後最大の大学改革を行い、学術研究とイノベーション発出の拠点とし、大学の基礎研究と企業の実用化研究を融合し、大学をイノベーション発信拠点へと変えていきます。基礎研究(大学・大学院)から実用化研究(企業)までをシームレスに繋げ、日本中の研究アセット(研究資産)をフル活用していきます。イノベーションナショナルシステム・甘利プランです。