国会リポート 第339号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

総 覧

 「ミサイル4発を同時に発射し、日本上空を通過して米軍基地のあるグアム周辺に着弾させることを慎重に検討している」 北朝鮮側のトランプ大統領に対する挑発は極めて巧妙な言い回しになっています。核ミサイル開発を今後も続けていく際のアリバイ作りです。

 つまりアメリカが合同軍事演習等、何らかの牽制行動を取ることを想定して、それを自国の核ミサイル実験推進の理由にするための先回りしたアリバイ作りです。おそらく通常の軍事行動訓練だろうと何だろうとアリバイにするはずです。そして、あれさえなければ凍結をしていたのに、そちらのせいだと主張するための準備です。金正恩委員長は心理学者かと思われるような周到に計算された挑発行為を続けています。まるでトランプ大統領らの足元を見透かしているかのような発言と行動です。

  北朝鮮は小型核を搭載したICBMを装備した国にならなければ、いつか独裁体制は外部から崩壊させられるという強迫観念に囚われています。外交的説得だけでは絶対にこの計画を放棄させることはできないということを前提で阻止行動をとっていかなければなりません。アメリカに反旗を翻すかつての独裁国家が崩壊していった歴史を相当詳しく検証しているに違いありません。自国が直接被害を受けるような危機に直面しない限り、アメリカが武力攻撃に出ることはできないということも見透かしているはずです。米国が北朝鮮のミサイル基地を壊滅させることは可能としても数千門のソウルに向けた通常兵器・大砲を事前に叩き切るという事は不可能だからです。

 北朝鮮はミサイル基地を標的にされた場合を考え、移動式の大陸間弾道弾や潜水艦からの中距離弾道弾を発射する技術も加速させています。これが完成されれば武力を正面に据えた独裁国の次から次への要求にどう向き合うかという状況が訪れます。「開発製造のための資金を断つ」しか手立てがないのに中国は決断をしません。経済的に中国の依存下にある反アメリカ独裁国家が国境の緩衝地帯として存続することのメリットを否定しきれないからだと思います。

 私は数か月前のテレビ番組で、最後の手段は中国が北朝鮮への原油供給のパイプラインを慎重に絞っていくことだと申し上げました。北朝鮮の貿易の9割は対中国のものです。そしてその貿易量は直近ではむしろ拡大しています。対中国貿易が北朝鮮のミサイル開発の資金源になっていると言われても仕方ありません。要は外貨稼ぎをさせないこと、国家生存の血液供給たる石油パイプラインを外交交渉のツールに使うことです。

  河野外務大臣の初デビュー、小野寺防衛大臣の再デビューにより日米外務大臣・防衛大臣会合、いわゆる2プラス2が開催されました。アメリカ側から日本側への安全保障の役割分担として日本側負担の拡大が求められています。東シナ海、南シナ海の警戒監視行動やイージス艦からの迎撃ミサイルSM3の地上配備、いわゆるイージス・アショアーの配備です。憲法の許す範囲内で最大限の協力関係を築いていかなければなりません。というのも北朝鮮問題は対アメリカ問題の前に、一に韓国、二に日本に対する脅威であることを日本国民全体が認識しなければ適切な危機管理は難しくなります。朝から晩まで森友・加計で「能天気な日本」と国際社会から嘲笑されぬよう緊張感をもって取り組んでいく必要があります。

 

今週の出来事「じぃ~じ放談」

久しぶりにお盆休みを数日もらいました。最近の私の最大の楽しみは1歳半の孫の遊び相手をすること。すぐに寸法が合わなくなるシャツやズボンを次から次へと買ってあげるのも私の楽しみ。家計の助けにもなると、考えを巡らせた娘は、ママとかパパとか言い始めた孫に『じぃ~じ、好き』と一生懸命教え込んでいます。

「俺が『じぃ~じ』なら、そっちは『ばぁ~ば』かな?」と家内に言うと、「私は『ばぁ~ば』なんて呼ばれるのは絶対イヤ」

そうか…。とすると…叔母ちゃん?まさか、お姉ちゃん?

『♪こ~とし60のお姉ちゃん~♪』

いけね!目まいがしてきた(笑)