国会リポート 第338号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

総 覧

 第三次安倍内閣三次改造が行われました。世論調査では若干支持率を回復しているようです。我が国にとっては今後の2年、3年は極めて重要なターニングポイントになります。その間を安定した政権が支えられるかが日本の命運を握っています。国民の信頼を取り戻し、安定政権が続くことを切に願っています。

  私の人事も取り沙汰され、期待と心配をお掛けしました。総理と4人で会食した場を含め、いかなる場面でも人事の話は出ていませんので、憶測が憶測を呼んだようです。一年半前の事件のことも取り沙汰されました。ご心配をお掛けしたことを改めてお詫び申し上げます。いまだ誤解があるようですので、正確に申し上げますが、私自身が何か問題を起こして大臣を辞任したわけではありません。秘書の監督責任を取って辞任した次第です。問題となったURの事案は私には全く知らされておらず、秘書の行動を把握できていなかったことを恥じて責任を取った次第です。そして、その秘書も不起訴となりました。

  さて、新しい内閣は「仕事人内閣」と総理が称されました。改造前にラジオ番組に出演した私に次の内閣を何と名付けるかと問われた際、「仕事師内閣」と称するものになるのではないかと申し上げました。正にその通りの命名を総理はされました。経済再生最優先ということであります。有効求人倍率は1.5倍を超え、正社員の有効求人倍率もついに1倍を超えました。企業収益は好調を堅持しています。課題は企業収益の改善が物価の適切な上昇と賃金のさらなる上昇の好循環を完全には作り出していないというところです。2%の物価目標を達成するには、3%程度の賃上げが必要です。物価安定目標の実現は日銀の主たる業務ですが、政府もそのための環境整備は連携して行うということが安倍内閣スタート時の共同声明でうたわれています。経営側はベアにこだわれば固定費として将来の柔軟性を失うと警戒していますから、一時金でもいいので3%を実現するという姿勢が重要です。合わせて賃上げ減税が非常に使いづらいという声が現場から聞こえます。設備投資減税のように使いやすい仕組みにする。制約条件をできるだけ簡素化するということが必要です。制度は作るけれどもできるだけ使われないように複雑怪奇にする。財務省の得意技はデフレの完全脱却までは封印してもらいたいと思います。同時に少しずつ回復してきた設備投資をもっと加速する必要があります。人手不足ですからIOTやビッグデータやAIやロボットを投入した省力化投資は生産性を上げる武器になります。日銀が省力化投資をすると物価が上がらないというようなコメントをしたことが誤解を生んでいます。一時的にそういう現象があろうとも生産性が上がるということは持続的な賃金上昇を可能とし、必ず好循環に結びついていきます。そうした環境をつくっていくカギは2つあると思っています。第4次産業革命のツールのフル活用と、イノベーションの源泉たる大学の意識改革と構造改革です。そのためには

1)GoogleやAmazonやFacebookのような世界中の誰もがお世話になるメガプラットホームを日本からも生み出す。
2)基礎研究の分野から世界を変えるようなイノベーションを連続的に発生させる。
3) そのために大学にマネージメントの意識を持ち込む。

この3点が不可欠ではないでしょうか。

 

今週の出来事「スーパースター共演?」

◎ 8月7日の夜のテレビ朝日「橋下×羽鳥の番組」にて、「歴代最高の大臣は?」の問いにコメンテーターの木村太郎氏は「甘利さんじゃないでしょうか?あれだけの事(TPP)とまとめたのは凄いことです」と。ネット上の動画でも見られるようです。

 

◎ 我が選挙区出身の日本のヒーロー、スーパーフライ級ボクシング世界チャンピオンの井上尚弥選手のV5祝勝会とアメリカ遠征壮行会が行われました。才能では兄にも引けを取らないという評価の弟の拓真選手の復帰戦の壮行会も兼ねています。先般も強豪の対戦相手を3Rでマットに沈め、「軽量級のマイク・タイソン」と言われるくらい異次元の強さのチャンピオンはハードパンチャーがゆえに自分の拳を痛めます。弟の拓真選手も同様です。

 直接話をすると、穏やかな礼儀正しい好青年で、試合中の鬼神のような強さとのギャップを感じます。9月、アメリカでワールドメジャーデビューができれば、間違いなく世界のスーパースターになるはずです。

 スーパースター。いい響きだなぁ。

 自民党流通懇話会会長の俺が目指すのはさしづめスーパー(マーケット)のスターか。(笑)