国会リポート 第335号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

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 日本中が涙する出来事が起きました。みんなの祈りも空しく、市川海老蔵さんの夫人・小林麻央さんが亡くなりました。ステージ4と発表されていましたが、私は奇跡が起こることを信じていました。というのも彼女の懸命な闘病生活のブログに接した1億2千万日本国民が「癌よ、治れ!」と総がかりで念を送っていたはずだからです。しかし、時に神はむごいことをします。「子供のことを思うと心残りで仕方がなかったと思います。」海老蔵さんの一言は我々の胸に刺さります。そんな中でも病気の恐怖と正面から向かい合う覚悟を決めて最後まで自身より他人を気遣う心配りは「人の域を超えている」(仏様の心)と海老蔵氏のみならず、皆が感じたはずです。

 政治経済以外の話題を国会リポートに書くのは初めてですが、それというのも麻央さんの最期が私にフラッシュバックを起こさせたからです。「愛してる」と呟いて静かに息を引き取ったという報告に衝撃を受けました。私の母はやはり癌で終末を在宅医療で過ごしました。実家で妹一家が総出で懸命に介護し、たまに私が顔を出すという状況でした。その最終盤、私は枕もとで母を看取ることが出来ました。その最期の言葉は声にならない口の動かし方で「ありがとう」と言って直後に息を引き取りました。麻央さんの最期は母との別れのフラッシュバックでした。いい人はなぜこんな早くに逝ってしまうんだろう。自身の無力さを感じつつ、海老蔵さんに心からなるエールを送ります。

 さて重い腰を上げて時事ネタに移ります。都議選のスタートに際し、小池知事が豊洲市場問題について結論を発表しました。『築地は守る。豊洲は活かす』 築地を豊洲に移転し、5年後に築地を再整備して戻りたい人は戻ってもらう。次第に支離滅裂になってきました。オリンピックも一周回って元のプランに戻り、豊洲の移転も一周回って元に戻った?いや両方作るという案です。築地を再整備し、2km圏内に2つ市場を作る。豊洲派と築地派に気を配りつつ、両方とも敵に回してしまったという結末です。豊洲に移転して5年経てば、それが定着をします。また築地に戻ってもいいと言われても、当事者はさらなる投資が必要になります。加えて市場は集荷事業者(水産7業者・青果3業者)とそれを競り落とす仲卸業者(水産641業者・青果103業者)で成り立っています。仲卸業者だけ部分的に戻ってもセリを主宰する集荷事業者が戻らなければ買い手だけではセリ自体が成り立ちません。投資をして豊洲に移転した集荷事業者が戻ることはありませんから、セリ自身が成り立たないということになります。電子商取引や大型店の直接引き取り、あるいは嗜好の変化等により、流通形態が変わっていく中で市場の規模は縮小しています。隣近所でさらにそれを2つに分け、存続させるということは不可能だと思います。加えて豊洲市場の整備費5900億円の大半は築地の売却費用で賄うとされていましたから、その費用が出ないとすると新たな都民の税負担が生じます。それらに蓋をしたまま、両派に耳当たりのよい話を発しようとすれば支離滅裂の結論になります。クールビズを発案した小池さんはキャッチフレーズを作るのは非常に上手いですが、実務の調整は苦手なんでしょうか。都政はスタートしたばかりですから政治的な駆け引き以前に現実の問題を処理する方に都庁の経営資源を投入して頂きたいと願っています。やれば出来るはずなのですが・・・。

今週の出来事「宇宙人?」

 議員会館の地下階には通称「健康センター」と呼ばれるトレーニングルームがあり、ウォーキングマシーンやエアロバイク等が揃えてあります。 20~30分の時間を見付けては議員や秘書達が健康管理の為、汗を流しています。

 健康寿命の延伸が安倍内閣の重要な政策でもあり、「自民党健康センターの会の懇親会」での会長の高村副総裁の挨拶は

「私も健康のためなら命も惜しくないと決意しています。」
「・・・。」

 先日、当のセンターで出くわした時、私が

「(会長は)毎日来てるんですか?」とたずねると、

「いや毎日は無理。甘利さんは?」

「私は毎週、いや毎月ですかね」

「俺が毎日は来れないのに、甘利さんは毎月来てるんだ?」

「・・・ん?」