総 覧
パリで卑劣な同時多発テロ事件が起こりました。無関係の人間を無差別に殺害するというやり方は、いかなる理屈を付けようと、断じて正当化できません。この種の事件が起こるたびに、刺激を与えないようにすべきだとか、議論に参画しない方が得策だ、などという一部有識者がいますが、それこそがテロ組織の狙っている世論作りだということを肝に銘じなければなりません。手をこまねいていれば、テロ組織は増殖していきます。世界中が封じ込めるための結束をすることです。もちろん、根本原因の一つである貧困の撲滅にも先進国は結束して取り組むべきですが、テロに参加する若者が多数富裕層の出身者である、ということにも注目すべきです。
かつて、イスラム国の日本人人質殺害脅迫事件をめぐる発言の中に、元政府の職員が「人質を救出するために首相が辞任することをやってみる価値はある。」などと、前代未聞の非常識なコメントをだしましたが、そんな輩が一時テレビで注目されること自体テロ組織の思うツボです。
さて、昨日7-9月期のGDP速報値がでました。年率換算-0.8%の下落です。前期の改定値が、-0.7%ですので2期連続のマイナスになってしまいました。記者会見で、リセッション(景気後退)に入ったということですか?と質問が出ましたが、結論から言えば、そうではないと思います。消費や住宅投資や輸出は伸びているのに、マイナスになった最大原因は在庫調整です。在庫が減ると景気にはマイナスにカウントされ、在庫が増えると景気にプラスにカウントされます。在庫の減り方増え方は、内容により意味合いが異なると思います。物が売れなくて在庫が積みあがればマイナスの増え方であり、物が売れる見通しでその準備のために在庫を増やせばプラスの増え方であります。同様に、物が売れて在庫が減っていくというのは、景気回復に向けた在庫調整であるはずです。かねてから、在庫を短視眼的に見るのはどうかと問題提起をしてきました。今回の在庫の減少は、消費が伸びていることと合わせると、前向きな減り方だと思います。
問題は、相変わらず投資が伸びていないということです。企業の内部留保は史上最高を更新し続け、ついには350兆円に達しました。経営側からはこの中には設備に変わったものや、海外企業を傘下に入れた買収株式も含まれていますから、と説明がありますが、それを引いた現預金等でも、史上最高の210兆円に積みあがっています。「人口減少の日本市場で、増産のための設備投資をする意味はない。」という声も聞こえますが、要請しているのは増産投資ではなく、生産性を上げ高付加価値化するための投資です。20年前と現在を比べれば、日本の製造業やサービス業の設備のビンテージは5,6年古くなっています。つまり、海外のライバル企業とは中古の機器で戦っているという現状なのです。併せて2点で投資を考えるべきです。
一つは、IOT、ビッグデータ、AIという、いわゆる第4次産業革命への対処です。世界のライバル企業は借金しても投資を行います。有り余る資金を抱えて投資に踏み切れなければ、後々経営判断を問われることになりかねません。
2点目は、TPPの妥結です。投資の障害となる技術移転要請とか、ソースコードの開示要求とか、ローカルコンテンツの強制等いわゆる投資先国のパフォーマンス要求は、TPP上、禁止されています。投資の予見性の高い世界の40%のGDPを占める市場が出来上がるわけです。日本からの輸出が、最終的には関税ゼロで行える市場です。やがて、増産投資も必要になります。投資の拠点国として選ばれる基準は、研究開発機能が高いことに加え、その国から輸出する関税ゼロの領域がどれだけ広範囲か。つまり、どれだけ広い範囲の国や地域と経済連携協定を結んでいるかが、重要な要素になります。国内の市場規模だけ見ている近視眼的な発想でなく、どれだけ研究開発拠点としてのポテンシャルや、輸出のハブになりうる国であるかを見極めるべきです。再生医療や、医療ビックデータの世界最大拠点として、海外の企業が本社や、研究開発拠点を日本に移す動きを見逃してはいけません。