国会リポート 第316号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

総 覧

 ハワイ・マウイ島でのTPP会合は残念ながら大筋合意には至りませんでした。ほとんどの国が今回を最後の閣僚会合にしようという決意で臨みましたが、2~3の主要部分で詰め切れず、時間切れとなりました。どこの国も不思議に思ったのが、いつもアメリカが見せる執拗ともいえる粘り腰が今回に限っては見られず、あっさりと断念を決めてしまったことです。「我々はもう一日残っても議論を進めていく用意はある。」カナダの言葉に象徴されているように各国の見通しを裏切った結末となりました。医薬品のデータ保護期間の長短の主張の違いは薬の開発国と消費国との思惑の乖離でありますが、乳製品の過大な市場開放要求や未処理案件として残った一部の課題が一日二日では合意不可能と判断をされたものと思います。

 2年半の交渉を通じて痛感することは日本の官僚チームの優秀性です。全体を統理しシステマティックに事を進めていく能力はピカイチです。どこの国も真似をすることはできないと思います。個別課題を問われれば即答ができるし、一つの変化が他に与える影響もスピーディーに計算ができる。個々を動かしながら全体を統理するというマルチの対応が個々の能力とチームでの連携力がなければなし得るものではありません。バイの交渉とマルチの交渉の違いを痛感する2年半でした。最終のプレナリーセッション(全体会議)で「次回は今月中、今月下旬にも開催すべき。」と強く主張したのはここで各国の気持ちが切れてしまうと漂流しかねないからです。国によっては夏休みを返上で作業し、大筋合意が成り立った先にバケーションがあると交渉官達を追い込んできた手前もあり、気持ちが切れてしまうとモチベーションを元のレベルに戻すのに相当の時間と努力を要するからです。各国が合意に向けてのモメンタム(勢い)を維持することが成功に導くカギだからです。議長国アメリカは具体的明示に言葉を濁していましたが、各交渉官が休息を取らないと心身ともに推進力を維持できないようです。

 さて、本日(8月10日)民間有識者を中心とする経済財政一体改革推進委員会がスタートしました。2020年に基礎的財政収支を黒字化する、つまり、借金返済分を除く今年度の支出は今年度の税収で賄うという財政再建目標です。アベノミクスによる税収増は毎年の予定税収を上回っており、今年度の赤字幅は16.4兆円から1兆円縮減される見通しです。これを延伸させていくと、2020年度の赤字幅は当初の9.4兆円から6.2兆円へと縮減されます。しかし、それでも6.2兆円の更なる削減をしていかなければなりません。そこで、今朝の推進委員会がスタートしたわけです。過去の財政再建プランがとん挫したのは、歳出を一律に削減したため必要なものまでカットせざるをえませんでした。いわば、我慢の財政再建です。我慢が途切れたところで改革はとん挫しました。安倍内閣がやろうとしているのは、工夫の改革です。過去にも無駄を省く挑戦はなされてきました。行政事業レビューは、よき伝統として安倍政権でも引き継いでいます。まずはこれをバージョンアップさせることが必要です。徹底的な見える化を図り、無駄を完全に撲滅していくことです。次なる取り組みが、改革の肝となります。公共サービスのイノベーションです。構造自体を変えてしまうことです。例えばかつての様に、公共事業を一律カットすれば必要なものまでカットされ、橋やトンネルの崩落を心配する事態になります。徹底的な見える化をはかり、必要なものと、そうでないものを仕分けし無駄を省けば予算の効率は上がります。さらに進んでPFI・PPPにより民間資金を活用すれば、構造的に財政再建に資することになります。見える化や公共サービスの産業化やインセンティブ改革等歳出入構造改革を全分野に均霑して行く挑戦です。

今週の出来事「白熱(白髪?)甲子園」

「週刊モーニングに出てましたよね。」

「?」

「バトル・スタディーズに甘利さん出てたじゃないですか。結構似てましたよ。」

女性記者に指摘されて慌てて見直すと高校球児漫画バトル・スタディーズに「アルマーニ明」という名の現代国語の教師として私が登場してました。以前作者からギャグで

「劇中にキャラクターとして登場させていいですか?」

と言われていました。アルマーニ先生はグレーヘアーが似合う、私をちょっとイケメン化した登場人物です。

 

そのグレーヘアーは相当好評で野党議員からも

「TPPで他国の大臣に混ざっていても目立ってカッコ良かったですよ。日本人離れして見えて。」

「日本人離れ?」うーん、凄い褒め言葉!よーし、次はもっと気合を入れたヘアスタイルにするぞ!目指せ!「人間離れ!」

ん?違うだろ!