国会リポート 第314号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

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 先週火曜の臨時閣議で政府の骨太方針と日本再興戦略二次改訂が閣議決定されました。骨太方針は経済財政諮問会議が中心となって策定する政府の経済財政運営と構造改革の基本方針であり、これに基づいて予算編成や構造改革の具体的作業が進行していきます。一方、再興戦略はアベノミクスの成長戦略です。成長戦略も策定以降、今年で二度目になる改訂版です。国内外の投資家が最も注目をしている政策案です。

 骨太方針は2020年にプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化する手立てと道筋を描いています。基礎的財政収支とは歳入歳出分から国債に関わる部分を除いた収支がバランスすることを云います。つまり、借金による収入と借金の利払いと返済を除いたその年に必要な政策経費はその年の税収で賄えるようにするというものです。ご承知の通り日本の債務残高はGDPの2倍あります。今年の税収は予算上は54兆5000億です。その日本には1000兆円超の借金があるということです。比率だけで言えば債務不履行を起こしたギリシャよりも悪い状況です。ただし日本の強みは1000兆円の借金の9割以上は日本国民が担っていること、そして対外純資産は367兆円で、24年連続世界最大という体力を持っていることです。それゆえ、長期国債の金利は0.5%と世界最低であり、信頼が保たれているということです。ただし、財政再建は待ったなしというところまで来ていますから、この機を逃したら財政再建は不可能になります。

 安倍内閣の財政再建手法は過去の分析と反省に立った最新の手法によるものです。かつては歳出項目ごとにキャップ(上限額)を決めて力づくで歳出削減をしていくというものでした。「まず歳出カットありき」の手法は期待した構造改革を生み出すというより我慢がどこまで続くかの放棄で、経済成長が失われた時に息絶えるという歴史でした。財政再建は歳出の抑制と税収の拡大によって初めて成功します。つまり、経済成長の上に初めて財政再建は成功するのです。デフレの下では絶対に上手くいかないというのが我々の反省です。ギリシャはIMFの指示通り歳出を2割カットをし、増税もしました。年金を数次に渡りカットし、付加価値税も引き上げ、軽減税率も重くしました。にもかかわらず税収はさらに減り、それがさらなる歳出カットと増税の必要性を呼ぶという泥沼に陥りました。経済規模は縮小し、実質GDPの縮小より名目GDPの縮小はさらに大きいデフレに陥りました。ギリシャの財政再建に欠けていたのは経済成長戦略です。「デフレの下では財政再建は絶対に出来ない」という認識が必要です。安倍内閣の財政再建は経済成長による税収増と歳出抑制による連立方程式で目標を設定しました。そして、歳出抑制から税収を生み出すという過去にない発想を取り入れています。①公共サービスや社会保障周辺サービスの産業化により歳出を抑制しつつ税収を生み出す。②一番コストパフォーマンスのいいベストプラクティスを全国展開する。③無駄の撲滅やより効率的な行動を取った人達にはインセンティブが働くようにする。これらの構造改革が改革期間中に実装されていくように諮問会議の下に有識者や内閣府・財務省が中心となる設計実行検証部隊を作る日本政府初めての試みです。

 さて、成長戦略は新たなステージに入ります。今までのステージが健康な体を取り戻すステージだとすれば新たなステージは強靭な体を作り上げていくステージです。15年以上に及ぶ長期デフレという世界に例を見ない異常な状態では経済はシュリンクをしていきました。これを健康な経済成長の体へと回復していく。経済の好循環による需給ギャップの解消です。第2ステージは強靭な体躯、つまり世界一競争力のある経済を作り出すことです。日本を世界で一番イノベーティブな国にするプランです。

今週の出来事「♪私以外、私じゃないの~」

フジテレビの昼の番組「バイキング」にておバカキャラでブレイクしている鈴木奈々ちゃんからマイナンバー担当大臣としての取材を受けました。

マイナンバーはほとんどの主要国で導入されていて、IT社会・デジタル社会のインフラともいえるものです。日本だけ導入しないとデジタル世界の中でアナログで戦うようなものです。

「アメリカで起きているなりすまし被害は出ませんか?」

「いくら私がジョージ・クルーニーに似てるからといって本人しか知らないパスワードがなければカードの電子キーは開きませんから。」等々、

「どのくらい安心だって言い切れますか?」

「奈々ちゃんが芸能界から失脚しないくらいの安心度ですよ。」

「そんなに!(?)」

あれっ?不安を助長する例えだったかな?(笑)でも、とってもいい子でした。