国会リポート 第211号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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「我々は、これからどうしていったら良いんでしょうか?」

民主党若手議員から、原発対応や震災対応の不備について助言を求められました。

「まずは、大臣・副大臣・政務官以外の行政や東京電力に入り込んでいる大量の議員を、引き上げさせる事です。」と答えました。

今どういう事態が起きているかというと、原発・震災対策の担当を細分化して、その責任者に民主党の議員を割り振り、行政機構の中に大量に張り付かせています。

それらの議員が官邸や党執行部に事態の推移を報告するために、役人はレクチャー (事態説明のための講義) を依頼されます。大量に行政に入り込んでいる議員のおもりを役人は強いられ、震災対策に向けた組織管理業務が疎かになります。

また、東電には細野豪志・馬淵澄夫両議員が監視役として張り付いていますが、それ以外にも 1年生議員が 5~6人張り付いています。東電の職員は新人議員に原子力発電の原理から説明しなければならず、まるで緊急事態下にもかかわらず研修生を抱え込んでいるような状況です。

また、菅総理は○○対策本部なるものを次から次へと立ち上げます。「この対策はどうなっているんですか?」と指摘されるたびに「直ちに対策本部を作ります。」というわけで、もう 20 を超える本部が出来たのではないでしょうか。

本部を立ち上げ、本部長を任命すると何となく問題が解決したような錯覚に陥るようです。役人は、増え続ける対策本部を回るだけでへとへとになります。

行政機構は、大臣・副大臣・政務官が各省に配置をされているのですから、それ以外の議員が個別の担当を持って大量に入り込んでくると指揮命令系統はバラバラです。おまけに菅総理は、思いついた事を大臣の頭越しで各省の局長に指示するものですから、混乱は更に増します。

行政機構や東電に大量に入り込んでいる議員が、まるで制御棒のような役目をし、横の連絡も付かず、情報の一元化も出来ず、混乱しているというのが現状です。

大量の制御棒を引き抜き、指揮命令系統の一元化をはかり、行政機構が機能するようにしていく事が大事です。

以上の事を、くだんの民主党議員にアドバイスいたしました。

「是非、甘利先生からその事を菅総理に言っていただけませんか?」

「政府の組織にかかわる事ですから、与党のあなた方に問題意識を持ってもらわないと。(菅総理は) 野党から指摘されて変えるような人ではありませんよ。」

私ども自民党は与野党連絡会議の場で、数次に亘る具体的提言案を手渡し、実務者会議でその補足も行っております。

私は当面、電力の需給調整とエネルギー基本計画見直しの自民党における責任者を仰せつかっており、数次に亘り検討会を開催し、連休前に提示される一次補正案に盛り込む案件、6月を目途に提示される二次補正予算への案件を取りまとめています。一次補正用のものは、水曜日(4月20日)までに取りまとめる予定です。

大連立の話が取沙汰されますが、菅総理のやり方を変えなければ災害対策の実効性が上がりづらいという事が分かるにつれ、別な人を頭に立てないと「自民党を入れてもダメだった」という言い訳にだけ使われる懸念が広がっています。

2、3日前に、国民新党の亀井静香氏から「菅総理から全権委任を受けているので大連立に取り組んで欲しい。」という連絡が自民党の各派閥の長に入ったかと思えば、すぐさま官邸からは水面下で「その話には乗らないで欲しい。」という情報が伝達される始末。

世間で言うほど、簡単ではないという事を、党内に居ると改めて感じます。