国会リポート 第174号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

私が推薦の口火を切った谷垣禎一氏が、順当に自民党総裁に就任いたしました。

主張が鮮明で攻撃力が際立っている河野太郎氏は、突撃隊長としては申し分がなく、レッドクリフの中村獅童氏が演ずる甘興将軍を彷彿とさせ、もう一人の候補者西村康稔氏は 10年経てば素晴らしい正統派リーダーに育つ素養を感じさせます。

総裁は、若手からベテランまですべての駒を操る総大将ですから、それに相応しい求心力、すなわち人徳を持っていなければなりません。谷垣禎一氏には際立った派手さはありませんが、自民党が立党の原点に返って保守なる革新を進めていくために大地に根を張った一からの改革を図って行く必要があり、その総大将としては的確者だと思います。

ただ、役員構成はもう少しスパイスを効かせても良かったのかな、という思いも致します。幹事長代理に河野・西村両氏を据える事も、突破力としては政権奪還に向けたエネルギーになると思います。

年内いっぱいは、何を攻めても世の中は民主党の味方に回るでしょうし、核心を突いた論戦を展開しても、一つ攻め方を誤ると意地悪ばあさんのレッテルを貼られかねません。年内は爽やかに、半年後から強烈な反転攻勢に入るという時宜を得た攻め方が必要です。

外交・防衛で言えば、米軍再編に関わる日米合意を白紙撤回するという民主党の宣言は、政権が変われば国家間の約束はチャラという有り得ないルールを作る事になってしまいますし、国際社会におる日本の信用失墜になりかねません。

また、日中韓と ASEAN で EU の共同体のような通貨統合まで持って行くという鳩山構想は、2つの点で米中に最大警戒をされます。アメリカ外しの東アジア構想は日本抜きの米中接近に打って出られる危険性があり、一方、政治体制のまったく異なる中国を通貨統合まで導く事は中国へ政治体制の崩壊を迫るという S級リスクを背負うことになります。

安全保障面で言えば、インド洋沖での給油活動に代わる貢献は、すでに行っている民生支援に加えて国際社会が評価する物とするために相当な知恵と交渉が必要でしょう。ソマリア沖の海賊対処に関して民主党と社民党の主張の整合性を付けることも極めて困難になってきます。

国会論戦で言えば、詳細なる質問通告なしに 50問も 60問も大臣に答弁をさせ、役人の答弁補完を一切認めないという民主党のやり方を、攻守ところを変えて自民党が仕掛けて行く事になります。各閣僚は、それに耐えるだけの経験も知識もない中で、野党時代の自分たちの主張の理不尽さを、身を持って痛感するわけです。

しかしその点についてだけは良い事だと思います。政権交代がしばしば起こる制度下においては、立場が変わった時の真っ当さにつながっていくからです。

民主党は、マニフェストの公約の実行を無理無理にも迫られているため、景気対策の予算の未執行部分を執行停止し、それをもって子ども手当て等に充てる準備をしています。

公立高校の授業料を保護者に渡すと目的外に使われる恐れがあるので、学校に直接支払いますという民主党の主張は、子ども手当てを直接保護者に支払うと目的外使用の懸念があるので幼稚園や保育園に直接払い込みますという自民党の主張と考えを一にしているように思われますが、どうして子育て費用だけ保護者に現金給付をするのか聞いてみたいものです。

私の地元では、子供が多数居る生活保護家庭への最高支給額は月額 50数万円になる、特殊な例もあるそうです。しかも、そっくり手取りになるわけであります。一方、はるかに安い給料で夜昼働き、歯を食いしばって生活保護を拒否している母子家庭の方にこそ支援を、と思っている人は私だけではないはずです。

 

今週の出来事「無駄な抵抗?

 

総選挙の際、自民党県連が作った政党ポスターは 18人の我が党関係者の顔が並んでいました。駅前でたてかけておくと、女子高生が集まってきて品定めを始めます。

「一番カッコいいのは?」と聞くと 10人が 10人「小泉進次郎」と答えます。(私を前にしながら…)

総裁選の地元遊説で、事前演説に若干遅れて到着したら、到着順のため小泉進次郎君の後の出番になってしまいました。

黄色い歓声の後、登壇した私は「15分遅刻して失敗したと、今回ほど悔やむ事はありません。小泉進次郎君の後にだけはやりたくなかった」と口火を切ると、ドッと笑いがおきました。

「あのイケメンさは、別次元だよね」うちの高校生の娘の発言です。

『…少しは父親に気を使えよ。デビューの頃は俺だって騒がれたんだから』

よ~し!これからは、目指せジョージ・クルーニーだ!