国会リポート 第147号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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今週号でも引き続き国家公務員制度改革についてリポートします。

昨年成立した基本法 (国家公務員制度改革基本法) の目指すところは、国内外を取り巻く状況の変化に対応し行政需要に見合って公務員の組織と人員を再配置していく。そのために、高い能力とモチベーションとモラルを持った人員を確保し養成していく、という事であります。つまり、時代や世界の変化にしたがって政府が解決すべき課題は変わっていきますし、それらに適切に対処できる体制を内閣が遅れをとることなく整備できるようにする改革です。

時代的役割を果たし終えたポストがいつまでも残っていたり、時代が要請するポストが迅速に設置できなかったり、能力の高い人材が年功序列のゆえに適切なポストに抜擢されなかったり等々、硬直化した耐用年数の過ぎた今の制度を時代の変化に対応した人事組織管理制度へと抜本的に組み立て直そうというものです。

人事院から主に級別定数管理機能を移管させようとすることが、改革の趣旨です。級別定数というと難しく聞こえますが、要するにポストのランク付けです。課長や課長補佐のポストの中で重要課長はどのポスト、普通課長はどのポスト、と格付けをする行為です。

時代の変化によって課題は変わり課題の変化によってポストの重要性も変わっていきます。そういう判断を人事院ではなく内閣が主体的に行えるようにするという趣旨です。民間企業ならばこんなことは経営側が行う経営判断であり、組合側が決めることではないはずです。それを組合の権利の代償措置として人事院が決定してきたことこそ前時代的仕組みではないでしょうか。

人事院は、重要ポストの設置の数によって下から昇進する可能性が変わることをもって、労働基本権と関わってくると主張しています。どの省のどのポストが政策上政府にとって重要なものかの判断は人事院につくはずはありません。まさに時の内閣が判断すべきことであると思います。それでも人事院の懸念に応えて内閣の判断に対する意見の申出や改善勧告する権限を人事院に持たせてあります。

今日まで人事院は各府省のポストの格付けを通じて各省を仕切っています。理にかなわない抵抗は単にこの権限を離したくないだけと思われてもいたし方ありません。人事官三人のうち一人はマスコミの持ち回りポストとなっていますし、谷人事院総裁が電波行政、放送行政を所管する郵政省事務次官だったことを重ね合わせるとマスコミの煮え切らない対応も合点がいくという声も聞こえ始めました。

基本法では、今年の六月までに内閣人事局 (内閣人事行政管理局 (案)) を設置するための法制上の措置を講ずることが規定されており、そのためには三月上旬にこの法案を提出しなければなりません。したがって、唯一残っている人事院との調整を半月以内に終える必要があります。この制度改革が憲法に抵触するかどうかは、先日内閣法制局がそれには当たらないという判断を示しました。三月に向けて法案の詳細設計をしていくにあたっても内閣法制局と慎重にすりあわせをしつつ進めていきますので人事院の懸念はまったく当たりません。

公務員の中立公正とは国民の代表として選ばれた議員により構成される内閣に忠実に従って行政を実施することであり、仮にいかなる政権にも距離を置いた中立的公務員が出来てしまうようなことになると、内閣の行政権を無視した官僚支配政治の極みになってしまいます。国民が選ぶ議員が構成する内閣に忠実な公務員が、憲法が要請する「国民全体の奉仕者たる公務員」なのです。

 

今週の出来事「天下りの根絶!?

 

予算委員会の総括質疑に民主党の菅直人副代表が立ちました。

なかなか話術巧みな質問者ですが、「イラ菅」の通称通り、野次に呼応して血が上りやすい性格で (人の事は言えない?「イラ甘?」) しばしば場内とのやり合いになってしまいます。

彼は東工大出身の技術屋で、弁理士の資格を持っている事でも知られています。新エネルギー、なかんずくバイオマスエネルギー開発に学生時代から関心が深かったようで、その問題に質問が及ぶと、「本当ならそっちの方の仕事に私は行きたかったんです。今でも出来る事なら、という思いは持っているんです。」と未練を語ったため、大臣席で思わず飛び交った言葉。

『ぜひ、明日からでもそっちの方に行ってもらいたい!』

この天下りに関しては、我々は一切のクレームは付けませんから!