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国会会期も余す所 2 ヶ月となりました。焦点は 6 月下旬に発表される財政再建のシナリオに移っています。
我が国の国と地方を合わせた長期債務残高は現在、800 兆円になろうとしています。国の経済規模 GDP が 500 兆ですから、ついに借金はその 1.5 倍を超えてしまったという事になります。毎年の国の収支で言えば、支出は 80 兆円あるのに対して収入は 50 兆円しかありません。つまり 30 兆円は借り入れをしなければやりくりできない状態です。会社ならばとっくに倒産しています。
支出の 80 兆円の内訳は、借金の利息払い (元本返済まで至りません) が 20 兆円、地方自治体に渡す交付税が 15 兆円、社会保障費が 20 兆円、公共事業が 7 兆円、防衛費が 5 兆円、教育と科学技術で 5 兆円、農林で 3 兆円、その他諸々が 5 兆円です。
財政は 「入るを計りて出るを制す」 が基本ですから、厳密にこれに従えば、支出を 30 兆円カットするという事になります。そんな事は不可能ですから、少しずつの合わせ技で財政の健全化を進めていくしかありません。健全化の目標は、まず 2011 年までの五ヵ年計画で、プライマリーバランスをプラスにする事です。プライマリーバランスの黒字化とは、今年入った収入で借金の利息払いを除いた支出が賄えるという事です。
今年度の収入は 50 兆円、支出は 80 兆円、うち利払い費は 20 兆円ですから、それを除くと 60 兆円、つまり乖離 (かいり) は 10 兆円 (実際には 11 兆) となります。しかし、高齢化が進めば年金を貰う人が増え、介護を受ける人が増え、医療を受ける人が増えていきます。
経済成長を遥かに上回る比率で我が国の高齢化は進んでいきますから、五年後にはこの収支差は 16 兆円から 20 兆円と言われています。これをいかに合わせ技で埋めるかという事です。
自民党政調会では、チームを作って財政再建のプランを作成しています。会長は中川秀直政調会長であり、座長が私です。
合わせ技とは 4 点セットです。第一に景気を更なる成長軌道に乗せ、税収の自然増を図ります。第二に国有財産を最大限に活用し、その収入を財政再建にあてます。第三に支出を徹底的に見直し、節約を図ります。それでも足らざる所は消費税の引き上げに頼らざるを得ません。この 4 点セット合わせ技で我が国の国難を乗り切る計画です。
支出をカットする事はみな総論では賛成ですが、個々の話になりますと全員反対になります。総論賛成・各論反対の頸木 (くびき) から、いかに脱却するか、悩ましい日々が続きます。