国会リポート 第416号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 令和3年度税制改正大綱、ならびに令和2年度第3次補正予算案、そして令和3年度予算案が策定されました。経済対策は税制改正案と2つの予算案にまたがって編成されています。税制改正と財政出動がコラボレーションして現下の課題に対応しようとするものです。税制改正は3つの柱に従って策定されています。1本目の柱はコロナ禍で担税力が落ちている法人や個人に増税となる改正には慎重であるべきだという点です。固定資産税と住宅ローン減税とエコカー減税に関してです。

 固定資産税は3年に一度の評価替えを迎えますが、今年1月1日の評価を基準にした課税額が来年から実施されるというものです。インバウンドが拡大し経済は好調であった時の地価はその後コロナの影響で下がり続けました。実態と離れたピーク時の評価額を課税の根拠とするには無理があり、今回は実態に合わせた改善を行いました。結果的には全ての地目を通じ税額が上がる地区は前年度税額に据え置き、下がる地域は下がった税額とします。これで来年度の固定資産税が増える土地はなくなります。

 次に住宅ローン減税ですが、消費税が8%から10%に上がった分を減税の年数の延伸で相殺するという手法は令和3年末までの特例でしたが、コロナの影響を加味し、ローン減税の仕組みをそっくり1年延長しました。併せてローン減税の対象面積を50平米以上から40平米以上へと拡大したのは景気対策を加味したものです。

 自動車購入時や車検時にかかる重量税や環境性能割課税も全体として負担が増えないよう工夫を致しました。ただし世界の動静が脱炭素化に向かっています。税制改正大綱には各自動車会社がカーボンニュートラルに向けての構造改革を進めていくための猶予期間である旨記載をさせてもらいました。

 2本目の柱は国家目標に向けてのものです。カーボンニュートラル政策やデジタルトランスフォーメーション政策に資する税制です。3年間で10%以上CO2排出量当たりの付加価値が向上するような工場の改善プランには設備投資金額の10%を税額控除する大胆な案です。改善が7%に届けば税額控除率5%は確保できます。またデジタルトランスフォーメーション減税はシステム同士が繋がらないデジタル化から繋がるデジタル化に向けた改革を民間事業者にも進めてもらう誘導策です。パッケージソフトを自社コンピュータにインストールするやり方から外部クラウドへみんなでアクセスする繋がるデジタル化に向けての導入減税です。来年の9月1日にデジタル庁が発足をし、その4年後に国・地方すべてのシステムが繋がるデジタルガバメントを完成させます。5年後のデジタル政府完成に平仄を合わせた民間のデジタルトランスフォーメーションを誘導していきます。

 3本目の柱は日本経済の精神構造の変革です。今回に限らずリーマンショックの時にも、消費税引き上げの時にも、日本経済の特徴は落ちるときには一気に落ちるが回復するときにはダラダラと回復する。外国との違いはV字回復がないことです。コロナという異常事態にも関わらず、企業の現預金内部留保は積み上がっています。国際比較で2倍以上です。無利子無担保のコロナ対応融資をとりあえず借りて、当面の支払いをした残りは貯金をする。その一方で、設備投資は見合わせ、額は落ちていきます。外国のライバル企業は厳しい経済環境下、なけなしの金をはたいて投資を行っています。コロナ後を見据えた構造改革投資です。かたや内部留保で対応し、かたや事業革新で対応する。コロナ後の勝負は見えています。カメラがフィルムからデジタルに変革した時、世界一のコダックは旧ビジネスにこだわり、富士フィルムは社運を賭けて異業種にチャレンジをしました。コダックは倒産し、富士フィルムは別業態の雄となりました。かつてのチャレンジ精神が問われています。

 

 

今週の出来事「今年の結び」

 コンビニの塩むすびにハマっています。ダイエットもあって昼食は海苔を巻いた塩むすび1個で済ませています。

 ごまかしの利かない塩むすびは米が厳選され、塩加減も絶妙ということを発見しました。シンプルイズベスト。『単純であればあるほどごまかしが利かない。』名言ですね。

 ん?しょっぱい話?まぁ、塩むすびですからね。