国会リポート 第303号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

総 覧

総選挙は予想通り与党の大勝に終わりました。自公で三分の二を超える信任を頂いたということは、新しい4年に、この国の未来を与党の手法にゆだねるということです。それは、同時に失敗は許されないことを意味します。アベノミクスの恩恵を受けている人、実感している人は、2割程度であるにも関わらず、圧倒的な支持を頂いたということは、国民から経済再生シナリオを達成するまでの猶予期間を頂いたということを意味します。

日本が20年近く苦しめられてきたデフレは、経済の悪循環により経済規模自体が縮小してしまう、という経済の病です。20年前、530兆円だった経済規模は、20年後に470兆円までその規模を縮小してしまいました。税収を支える母体が、社会保障を支える母体が、そして、財政再建を支える母体が縮小し続けているのです。手取りが減っても物価が下がった分だけ実質賃金は上がっているという言い訳は、いつまでも続きません。名目賃金が上がっていく中で、物価の影響を差し引いた実質賃金も上がっていくというのが、健康な経済の姿なのです。20年間で60兆円縮んだ経済を、2年足らずで12兆円取り戻すことに成功しました。この流れを止めてしまっては元も子もなくなります。企業収益を犠牲にした物価の下落が賃金の下落を招き、それが消費の下落を呼び、それがさらに企業収益の悪化を招くという悪循環を逆回転の好循環に転ずることが、鍵となります。事業環境を改善し、企業業績を伸ばし、賃金や雇用を改善し、それがさらに消費を引き上げる。そして企業収益をさらに伸ばしていく。これが目指すところの好循環です。

事業環境を改善するために、大胆な規制緩和と国際水準並みの法人税改革に取り組んでいます。数年間で国税と地方税を合わせた法人実効税率を30%を切るところまでもっていきます。投資の障害になっている時代に合わない規制を撤廃していきます。先般、トヨタ自動車が市販型燃料電池自動車、いわゆる水素自動車を発売いたしました。水素を燃料とし、酸素と結合させ電気を生み出し、それを使った電気自動車です。排出するものは水素と酸素の化学反応による蒸留水だけです。実験車では一億円もしたものが、わずか数年で700万円になりました。補助金が付きますから、500万円で手に入ります。量産化でさらに廉価になっていくでしょう。課題の水素ステーションは、設置費が5億円もかかります。しかし、安全を担保した規制緩和で3億円近くまでコストダウンは可能です。規制緩和が新たなフロンティアを開いていく好事例になるはずです。 

拡大した企業業績が、賃金や下請け代金や設備投資に旺盛にまわっていくよう誘導していきます。選挙の2日後には、直ちに政労使の会議を再開をし、好循環実現に向けた政労使3者の共通認識に合意をいたしました。労使は来年の春闘でも賃上げを行う。柔軟な働き方やワークライフバランスの改善に向けて取り組む、そして政府はそれらが形成されるための環境整備を行う。選挙後直ちに動き始めた安倍内閣は、着実に国民の負託に応えるべく、活動を開始しています。

さて、昨日第三次安倍内閣が組閣されました。 組閣といっても、防衛大臣を除きすべてが再任をされるものでしたので、事実上、今までの動きを加速させていく、ということに他なりません。現下の課題は、地方への均霑と消費の下支えです。補正予算は3兆数千億円になりますが、地方創生の前倒し分として、使い勝手の良い交付金と地方消費喚起のためのプレミアム商品券や、ふるさと名物等購入システムが目玉となりそうです。地域の中での消費喚起と外の消費力の地域への誘導が鍵です。

今週の出来事「嵐の後の静けさ?」

選挙後、初の閣議で総理が

「皆さん、だいぶお疲れのようで…」

「一番お疲れのはずの総理が、一番お元気そうですねぇ。」

と言うと、

「実は、選挙期間中の移動距離が一番長かったのは私じゃなくて、望月環境大臣ですよ。」

というのも選挙中に、COP20(気候変動枠組条約第20回会議)が南米ペルーで行われ、泣く泣く選挙期間中にも関わらず、会議に環境大臣が出席をしたことを意味します。

その総理の遊説の最後は、例によって麻生副総理と秋葉原にて。「最後の締めは、秋葉原!」なんか、飲み会の締めは、ラーメンみたいになってきたな(笑)。

 

応援演説と言えば、総理と人気を二分したのは小泉進次郎議員。その小泉さん、選挙終盤、東京駅前でニュースZEROのキャスター、嵐の櫻井翔君のインタビューを受けていました。選挙翌日、当選の報告演説を駅前でしていた小泉議員に女子高生が駆け寄ると、

「小泉さん、櫻井翔君の取材受けていましたよね。翔君と握手したんでしょ?」

「うん、そうだよ。」

「その手と握手させてください。」

「……。」

さすがの小泉進次郎も、嵐の前では飛ばされる?(笑)。