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政府の経済財政と改革に関する基本方針(いわゆる骨太方針)と日本再興戦略(いわゆる成長戦略)改訂版、並びに規制改革実施計画の3案が党内了解手続きを進行中です。火曜日の政調審議会・総務会、与党責任者会議で了承されれば直ちに閣議決定手続きに入ります。
骨太方針は次年度に向けての政府の基本方針で、いわば基本設計に当たります。成長戦略はアベノミクス3本目の矢で、いわば詳細設計に当たります。骨太方針は経済財政運営に関わる政府の司令塔である諮問会議が作成し、成長戦略は実施政策作成部隊の産業競争力会議が担当します。規制改革会議の岡議長は産業競争力会議のメンバーも兼任をし、また科学技術政策の司令塔である総合科学技術会議(現在は総合科学技術イノベーション会議と改名)の橋本委員は産業競争力会議の委員も兼務しています。
つまり産業競争力会議は兼務人事を通じて総合科学技術イノベーション会議と規制改革会議を繋いでいるわけです。こうした構想は安倍内閣が組閣される以前に私が安倍総理と相談をし、設計を致しました。総理の経済再生に懸ける思いは極めて強く、組閣前に構想を練る時間を頂いたためにこういう設計が出来たわけです。
さて、骨太の方針では
1)デフレの脱却と日本経済再生、向こう10年間平均で実質経済成長率2%、名目経済成長率3%以上を目指し道筋をさらに明らかにしていく
2)経済再生の方向性はイノベーションとコーポレートガバナンスを柱として行う
3)震災被災地を「創造と可能性の地」としていく
4)50年後を見据えた制度、システム改革に着手する等を大きな方針として提示しています。
一方、成長戦略改定の目玉は
1)成長志向型の法人税改革
2)GPIFの運用ポートフォリオの見直し
3)新たな労働時間制度の創設
4)外国人材の活躍・推進のための取り組み
5)農業生産法人の見直し・60年ぶりの農協改革
6)混合診療の大幅拡大などこれまで乗り越えられなかった壁を突破する骨太な改革が盛り込まれています。
海外メディアや海外投資家から「3本目の矢の成長戦略の成果はいつ出るのか?1つでもあるなら早く教えてくれ。」とよく言われます。1の矢の金融政策や、2の矢の財政政策は即効性のあるものですから効果は見えやすく、成長戦略はその多くが法律改正を要するものであるだけに時間が必要です。昨年秋の臨時国会で産業競争力強化法や農地バンク法案、あるいは国家戦略特区法案をはじめとする9本の法案を成立させ、今通常国会では投資減税拡充法案等の30本が成立致しました。その法律に従って具体的な作業が進んでいきますが、法律に拠らずともあるいは法律に先駆けて成果が出ている案件は数多あります。
1兆円規模の投資減税等を実施致しましたが、3年で行う予定の設備投資水準の回復は2年で出来そうです。有効求人倍率は政権交代前の0.82から1.08まで回復しました。政労使会議で賃金引き上げを要求した結果、月額で2%以上、夏季ボーナス引き上げ率は8.8%、それぞれ10年間、30年間で過去最高水準となりました。保育の受け皿確保に着手し、育児休業給付を休業前賃金の2分の1から3分の2に引き上げました。そしてこの一年で女性の就業者数は53万人増加をしました。少額投資非課税制度を実施した結果、475万口座が開設されました。
総理のトップセールスにより火力発電所や高速鉄道、医療機器など海外のインフラを日本の企業が受注する金額は3兆円から9兆円に伸びました。羽田の発着枠の拡充やASEAN向けビザ要件の緩和は訪日外国人旅行客の数を前年比24%増加させ、1,000万人を超えました。今年も5月までの訪日者数は前年比でさらに2割上回っています。農産物輸出は前年比22%の伸びで5,500億円を超えました。成長戦略が地に着いたばかりであるのに、もう既に具体的な成果が現れつつあります。