国会リポート 第274号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

総 覧

本日、総理は消費税引き上げの判断をし、併せてアベノミクスを強力に後押しをしていくための経済政策パッケージの発表を致します。

法律の予定する通りに消費税を引き上げた場合、消費税の引き上げ前後で駆け込み需要とそれによる反動減に見舞われます。適切な対処を取らないとそのまま失速する恐れがあります。反動減を埋め戻し、消費の落ち込みを平準化するためには2兆円規模の対応策が必要といわれていますが、問題は需要減の埋め戻しをするだけでなく、成長軌道に再度乗せていくという経済力の底上げが必要です。

つまり消費税引き上げがなかりせば辿っていったであろう上昇軌道に復帰する経済の足腰の強化をしていくということです。

イギリスやドイツでは消費税を引き上げる際には次の四半期か次の年に法人税減税や所得減税を仕掛けます。ここで2点注目をする点があります。1つは減税が課税ベースの拡大とセットで行われている点。2つ目はイギリスでは所得税減税と合わせて行われている点です。

この両者と日本のケースが決定的に異なるのは両国とも正常な経済状態の中で消費税引き上げが行われているのに対して、日本はデフレの脱出過程で行われているという点です。デフレの脱出過程で行われている日本では反動減の2兆円を大幅に上回る対策をせずデフレに戻ってしまっては元も子もないし、消費者物価だけが上がっていって賃金がついていかない、単なるコストプッシュインフレに陥ってしまったら最悪の事態だということです。

法人税は復興予算25兆円を捻出する一部として昨年、今年、来年と3年間で8000億円分ずつ増税をしています。昨年度、平成24年度の法人税収は予算の設定を上回って7700億の剰余金が出ました。今年も大幅に上振れしそうです。上振れ分を使って先に復興財源を確保し、以て法人増税を1年前倒しで終了し、その金額を賃金の改善や下請け代金の改善に回すことが出来ればまさに経済の好循環に資することが出来ます。日本が20年間苦しんできたデフレは物価が下がる以上に賃金が下がり、それを受けて消費が下がり、さらに物が売れないので物価が下がり、さらに賃金が下がるという悪循環でした。物価が上がる以上に賃金が上がっていく、企業業績が賃金の改善に繋がっていく、経済の好循環を作っていくことが至上命題です。

復興増税は来年まで設定されており、復興予算の一部に充当するものを一年繰り上げるとはけしからんと言われる方の心情は理解します。しかし、復興が来年で終わるはずはありません。重要なことは長期に亘って復興を支える強い経済をデフレから脱して一刻も早く作ることが大事なのです。賃金は上がらないけど所得税を下げて手取りを増やすべきだという主張もありますが、それはデフレ経済下での論理だと思います。経済成長はしていないのに物価がマイナスになったから実質では成長しているという理屈とどこか似かよる論理です。デフレを脱するということは実質GDPも成長し物価上昇を加味した名目GDPはさらに高い数字を示すという目指す方向からすれば手取り賃金を引き上げるためには税込賃金も引き上げていくという発想が大事です。

9月20日からスタートした政・労・使会議はその頭に「経済の好循環実現のための」という形容詞が付いています。政府は賃金引き上げのための環境整備たる法人税減税の環境を作る。労働側は失業なき労働移動についての知恵を共有する。経営側はアベノミクスによる企業業績の向上を賃金や下請け代金の充実に割き、経済の好循環に貢献する。日本経済を構成するそれぞれが自分に出来ることを見つめなおす機会でもあります。

当初は政府の減税政策に戸惑っていた与党でありますが、精鋭が集う集団です。まとめるために汗と知恵を出してくれました。

 

今週の出来事「失言語大賞?」

年末が近づくと話題になってくるのは、今年の流行語大賞です。

「アベノミクス」は世界流行語大賞と言ってもいいくらいのインパクトを世界に与えましたから大賞最有力候補のはずです。しかし、この種のイベントの常として発表時期に近いときに話題を振りまいたものほど有利になりがちです。

 

例えば、「いつやるの?今でしょ!」

いや、半沢直樹の「倍返しだ!」だな。 

この啖呵、一度でいいから使ってみたいなぁ。 

 

「この間貸したお金、いつ返してくれるの?」

「倍返しだ!」・・・。

 

「じぇじぇじぇ!」