総 覧
先週4、5日で慌ただしくオランダとデンマークを視察し、両国の副首相を始めとした数名の閣僚と会談をしてきました。オランダは農産品輸出拠点のフードバレーを、デンマークは医薬品開発輸出拠点のメディコンバレーをそれぞれ視察し、関係者とも意見交換をしてまいりました。
オランダはワーヘニンゲン大学を中心に食品会社の研究所が自然発生的に集まり、コペンハーゲンのメディコンバレーも同様に大学キャンパス周辺に製薬会社の研究所が集まり、両地区とも自然発生的に出来た各施設の代表者らによる協議会が、やがてそれぞれの施設を有機的に繋げるコーディネーター役としての財団等に発展をしていきました。やがてその財団等は参加企業からの要請を受け、行政への要請や大学と企業とを結ぶコーディネーター役や、製品開発に向かってのプロジェクトマネージャー役を担うようになっていきました。
絶対に真似出来ないと感じたのはメディコンバレーのバイオバンクです。デンマーク国民は生まれるや直ちに足の裏から微量の生体サンプルを採取され、直ちにバンクに登録保管されます。それらの生体が新薬開発のデータベースになっている点です。
感銘を受けたのは両地域とも国や自治体が最初からお膳立てをしたわけではなく、大学を中心にそれに関わる企業の研究施設が自然発生的に集積を作っていったということです。その後に国や自治体が環境整備をサポートしたという形成過程を取っているということです。つまり最初から仰々しく特区を宣言し、そこに行政が全てお膳立てをするという方式は取っていないということです。
「この地区に特有の減税政策とか金融政策とか規制緩和政策はありますか?」との私の質問に、コーディネーター役の財団等の役員は困った顔をしながら「国全体での税制軽減措置とか金融措置とか規制緩和措置とかはありますが、この地に特定したその種のものはありません。」 フードバレーもメディコンバレーも同様の回答でした。そもそもそれらの地域を特区とは呼んでおらず、アメリカのシリコンバレーがそこ特有の環境整備を政府にしてもらっているわけではないのと同様でした。単にその一体をフードバレーと呼び、メディコンバレーと呼んでいるだけでした。このことは今後作っていく国家戦略特区のキーワードになりそうです。特区の中における規制緩和や税制の特例は必須アイテムだとは思いますが、白地に施設整備から何から国や自治体任せでやるのでは絶対に成功しないということだと思います。あくまでも民主導でその民の力を結集させる、そういう仕組みこそ必要だということを痛感しました。必要は発明の母ならぬ必要は発展の母であります。自然発生的に結集した産学の経済資源を有機的に結びつけていく仕組みこそ政治主導で作らねばならない最大のインフラなのです。
国家戦略特区の旗揚げをした途端、各地から我が地を指定してという要望が殺到しています。場所だけ用意するから後は国が面倒を見てくれという発想では絶対に成功しないと痛感を致しました。産学の集積が自然発生的に形成されているところに、それらの資源を有機的に結びプロジェクトマネージャーが出来る仕組みは是非政治主導で作りたいと思っています。そしてそこが拠点となり立地企業がプロジェクトを進める際の制度的、行政的制約を一挙に片付けるワンストップサービスが出来る体制を構築する、そうした点を中心に特区の指定を図るべきだと確信するに至りました。
秋の臨時国会は成長戦略実行国会です。産業競争力強化法で企業設備の新陳代謝を図りますが、同時に産業自体の新陳代謝も図っていきます。加えて国家戦略特区法で規制緩和を中心とした枠組みを図っていきます。それを元に特区諮問会議で数ヶ所の地域指定を行なっていきます。