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ついに円が三桁の大台に乗りました。かつて私が「このまま円安が続いた場合、国民生活への影響を考えなくていいのか」との記者の質問に対し、「三桁を超えても収まらずに、そのまま円安が続くようであれば輸入物価が国民生活に及ぼす影響を政府は考えなくてはならなくなる」と答えたことが、物議を醸したことがあります。
為替レートのどの辺りが適切かは閣僚が言及すべきことではありませんが、二つだけ言えることは過度の為替高も、過度の為替安もその国の経済にとって好ましいことではないということと、為替相場が乱高下することも輸出企業の値付けが出来なくなるので好ましいことではないという点です。
為替と株価は連動して変動することが多々ありますが、理想的には為替がその国の経済を反映して安定していく中で、株価が上がっていくことであろうと思います。兜町では1万3千円を「甘利ライン」と呼んでいました。1万5千円を射程圏内に置いている今、第二の甘利ラインを指定してくれという声は多々ありますが、私が為すべきはこれからも経済が成長し、株価が上がり続けるように成長戦略をよりリアルで夢のあるものにしていくことです。6月中旬を目途に成長戦略の取りまとめを図って行きますが、総理の『取りまとめを待つことなく方向がまとまったものから順次リリースせよ』との指示もあって、成長戦略の目玉は既にいくつも段階的に発信をされています。全体を取りまとめる時にどうインパクトが出せるかが苦労のし甲斐です。
3週間ほど前、各省庁にさらなる檄を飛ばす必要性を感じ、日本経済再生本部の事務局体制を強化致しました。事務局長は政府の事務の最高責任者、内閣官房副長官が務め、事務局長代行は副長官補と事務のトップは各省の次官級以上の布陣を敷いていますが、内閣官房の性格上、その使命が政府全体の広範な調整役のため再生本部に専心というわけにはいきません。
かと言って、その下の次長は3人体制ですが、自身のエリアに忙殺されています。そこで全体を俯瞰し、関係省庁に檄を飛ばせるポストを作ることにし、事務局長代行と次長との間に事務局長代理ポストを作りました。経済産業省の菅原製造産業局長に経済再生本部事務局長代理を併任させ、6月までは成長戦略に専念させることに致しました。彼は野党時代、私が党の成長戦略“甘利プラン”を策定した時、手伝ってもらいました。
現在各省にかなり高めのボールを投げ込んでおり、順次回答のレベルを上げさせているところです。各省とも泣きを入れながらも何とか水準を上げようと懸命に取り組んでいます。私にとってありがたいことは、私からの各省大臣に対する要請が「総理指示」という「水戸黄門の印籠」になっていることです。
安倍政権に代わってから確実に経済がいい方向に向かいつつあるとは言われていますが、経営側のみならず労働側にとってもその実感が得られるように、まさにこれからが正念場です。
200兆円と言われる企業の保有している現預金の5%ずつでも毎年投資に加算されることになれば、先の補正予算に等しい額を財政の力を借りず、民間の力だけで毎年続けるという効果になります。