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衆議院総選挙無効判決が広島高裁を皮切りに各地で下されています。今まで一票の格差に違憲判決が出たことはありますが、選挙そのものを無効とする判決は初めてであり、国会内外に衝撃が走りました。
連続する判決は重く受け止め、一刻も早い違憲状態の脱出が必要です。まずは緊急避難措置として、昨年末に自・公・民3党により可決された0増5減の定数是正案を実施に移すための区割り法案を、今国会で直ちに成立させるべきであります。抜本是正案は各党の思惑や外向けのパフォーマンスが先行しがちになるため、まとまるのに時間を要します。
相手が30議席削減ならこっちは50、相手が50議席削減ならこっちは80、と世論へのアピール合戦で抜本改革が歪められないように腰を据えた議論が必要です。最高裁の判決が出る前に最低限の対応は完了しておくべきだと考えます。
それにしても一つ引っ掛かることは、私の記憶によるとその昔一票の格差はどこまで許されるか、という案件に関し、3倍を超えないという判断が最高裁で下りたはずですが、その基準はいつからどういう理由で変更になったのかという点です。
一人の有権者は二人分の権利までは行使できないという意味で、格差は2倍未満ということだそうですが、そもそも衆参では解釈は異なりますし、アメリカ上院は人口要件は加味されておりません。国民の権利と制度の安定性の両方から抜本的対応が必要だと思います。
小選挙区制度は51%の意思に残りの49%は従うという哲学ですから、なんとなく市場原理至上型の哲学を連想させます。A winner takes All.(勝者が全てを持ち去る)という哲学よりA winner takes most.(勝者が一番多く取る)という哲学を我が国は取るべきとの思いをかねてから持っている政治家の一人です。
日本の経済政策や財政政策の基本的方向付けを決めるのが、総理が議長を務め、私が進行役を務める経済財政諮問会議ですが、今度そこで日本型資本主義を議論することになりました。
アメリカを拠点に世界で活躍する経営者であり、経済アナリストの原丈人氏を迎え、彼の持論である公益資本主義について語ってもらいます。
アメリカ型株主資本主義は、株主のために他の全てのステークホルダーが犠牲になるという傾向がありますが、彼の指向する公益資本主義とは株主以外に従業員、取引先、協力会社、地域社会等、その企業がかかわる全てのステークホルダーが濃淡の差はあれ、企業の利益の還元先になるというものです。株主至上主義ではなく「企業は世の為、人の為」という哲学です。何となく東洋の経営哲学にふさわしく、一度話を聞いて議論をしようということになりました。