国会リポート 第260号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

先週金曜日、総理よりTPP担当大臣を正式に命ぜられました。経済財政政策担当大臣であり日本経済再生担当大臣であり、税と社会保障一体改革担当大臣に加え、TPP担当大臣として各省調整の指揮をとることになりました。以前に総理から「また新しい事をやってもらわなくちゃならなくなるかもしれない。」と、言われていたことが現実になりました。TPP参加のタイミングとしてはギリギリでありましたし、それだけに今後タフネゴシエーションが必要になってくると思います。一刻も早く強力な交渉チーム編成をし、遅ればせながら国益の最大化に全力で取り組んでいかなければなりません。

TPPはアメリカにとってはアジアへのゲートウェイにとの思惑があるでしょうし、日本にとってはアジアにおける貿易ルールを日米合同で作りたいという思惑もあります。それぞれが自国益の最大公約数を求めて粘り強い交渉が始まります。

さて、ここのところアベノミクスを受けての各社報酬引き上げが連鎖をしています。もちろん、基本的な賃金交渉は労使によるもので、内閣が指示するものではありませんが、「業績が上がったところはできる範囲で。」という安倍総理からの要請が好循環を引き起こしていることは確かです。春闘の賃金交渉で自動車業界はほぼ全社満額回答をいたしました。自動車産業は日本の基幹産業であり、全雇用者の一割近くをかかえる中心的存在です。アベノミクスは経済統計の数字の改善から、実体経済の改善へとフェーズが移りつつあります。第一の矢の大胆な金融政策、第二の矢の機動的な財政政策が放たれ、いよいよ第三の矢、民需主導の経済成長へと繋げる成長戦略の矢が放たれようとしています。

日本は課題先進国といわれております。かつては公害問題に悩みました。しかしその課題を克服をすることによって環境負荷が少なく、かつ高性能な製品を生み出すことに成功しました。今世界に先駆け日本が抱えている課題、少子高齢化であり、高度成長期のインフラの更新コストであり、都市と地方の経済格差であり、資源争奪の中での低廉で安定的なエネルギー供給の体制であり、どれを取っても現在日本が抱えている課題は将来の世界の課題になるものです。世界に先駆けてこれらの課題に挑戦し、解決策を得る道筋はそっくりそのままソリューションパッケージとして将来海外に輸出できるものになります。つまり、課題を抱えるということは成長の可能性を抱えるということなのです。産業競争力会議においてはこれらの課題の解決されたあるべき将来の社会像を描き、そこに到達するまでの道のりの路上に横たわっている解決すべき課題を時間軸で処理していくロードマップを描きます。緩和すべき規制、国がなすべき基礎研究、そのゾーンに民間投資を呼び込むべき研究開発及び投資減税。従来の成長戦略が単発の技術に対する環境整備とするならば、理想的な社会像にたどり着くまでの道のりを描き、そこに横たわる障害物を官民で除去していくためのすごろくマップを示すのが産業競争力会議の役割です。産業競争力会議から提言された課題は、親会議の日本経済再生本部で総理指示となって各大臣に解決が命ぜられます。経済産業大臣には新たなエネルギー供給体制、農林水産大臣には農産物輸出一兆円プラン、科学技術担当大臣には予算と権限を持った司令塔としての総合科学技術会議の再構築、厚生労働大臣には抱えるだけの雇用政策から新産業への移動を支援する雇用政策へ、矢継ぎ早に総理指示が具現化していきます。 

 

今週の出来事「満腹です!」

・・・予算委員会にて。「甘利経済再生大臣!」(予算委員長)。

「いえ、経済財政担当大臣としての答弁です」(甘利)。

・・・「甘利経済財政担当大臣」(予算委員長)。

「いえ、今度は社会保障と税一体改革担当大臣としてお答えします」(甘利)。

・・・予算委員長が私を指名する度に、どの役職で指名すべきか混乱しています。

「甘利さんはいろんな役職があるから、この上TPP担当までついたら、わけわかんなくなるだろうね。だからいつも、『甘利国務大臣』って呼べばいいんだよね。」安倍総理の言葉です。

「あのー、総理、『甘利酷務大臣』の間違いじゃないでしょうか?」

「大臣って労災あるの?」