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最近、気になる言葉があります。
「地域主権」なる言葉は、地方がより主体的に行政の取り組みを判断できる権限を持つ、という意味で使われているのでしょうが、本来、主権とは「その国の意思以外の何物にも支配されない国家統治の権力」を意味する言葉ですから、その主権を行使できるのは国民以外の何物でもありません。
「主権在民」とは、『日本を統治する権限は日本国民にのみにある』という意味ですから、使い方には誤解のないようにして欲しいものです。
「尖閣諸島は日本の主権の及ぶところであり、アメリカは日米安保条約に基づき、尖閣諸島に他国の武力行使が行われた時には日本の主権が侵されたものとして軍事的行動をとる。」とクリントン国務長官は明確に宣言しています。
「誰も住んでいないところのために、アメリカが若い兵士の命を架けるのでしょうか?」などと発言する人がいます。主権とは、人が住んでいる・いないにかかわらず、日本の国土、領海、領空が対象です。これが侵害された場合にはあらゆる手段を使ってそれを排除するというのが世界の常識です。
住んでいる・いないは判断基準とはなりません。それより何より、「アメリカは守ってくれるのか?」ではなく、「アメリカの協力をもらって日本が守る。」という事であり、自国の主権を守るのに他国任せの国など地球上に存在しません。
主権とは、すなわち国民の命なのです。そうした毅然たる姿勢がない限り、日本は常に侵略のリスクを抱える国となります。
平成22年度、日本の領空侵犯への対処のための航空自衛隊のスクランブル発進は 386回を数えました。平成23年度は、このまま行けばそれを更新しそうです。毎日、領空侵犯の緊急事態に F15 戦闘機が発進しています。最も多い領空侵犯はロシア機によるものですが、中国機によるものはこの一年で 3倍に増えています。中国は、海においても日本の排他的経済水域にしばしば意図的に侵入してきています。
これらは中国の東シナ海に対する覇権の意思表示に他なりません。
主権の侵害やそれに準ずる行為に対しては、断固たる姿勢で対処する事が『普通の国』の在り方なのです。
日本の自衛隊が、より高度な装備と高度な技術を必要とされるのは国是である専守防衛に起因します。よその国は盾と矛で国を守っている中で、日本は盾だけで国を守る事を余儀なくされているからです。
軍事の専門家によると、矛に対して盾だけで対抗をしようとするならば、軍事力は相手の 3倍必要となると言われています。そこに日米安保条約の必要性があります。
専守防衛の日本は盾の能力しか持ちませんが、矛の役割は米軍が果たします。日本が軍事攻撃を受けたとき、アメリカはアメリカ本土への攻撃と同等とみなすというところに強大な抑止力が働くのです。
安保条約を破棄するなら、日本に脅威を及ぼす相手国の 3倍の能力を持つか、憲法を改正して専守防衛を放棄し自衛隊に矛の能力も持たせるかの選択になります。
平和とは、日本に侵略を企てようとする国に対して『極めて高くつく』と思わせる事です。
事故や事件が起こるたびに危機管理の重要性が叫ばれますが、危機管理とは最大の危機に対処する事から逆算して小事に対処するというのが世界の常識です。大きな危機に対処出来る能力を持てば、小さな危機はより制御可能になるからです。そして最大の危機とは言わずもがな戦争の危機です。
平和ボケした日本が、戦争の危機と真面目に向かい合う事が危機管理の原点です。