国会リポート 第235号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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民主党内で消費税法案の『事前審査』なるものが難航しています。事前審査とは、政府が法案なり政策なりを決定する際、国会に提出する前に与党内の合意を取り付けるという意思決定の作業です。

与党としての意思決定手続きが完了しないまま閣議決定がなされるという事は通常ありませんが、民主党の場合は慣れていないせいかその辺の手続きが、依然として曖昧なようです。

昨年 12月に、社会保障と税の一体改革は党内議論の末了承されたはずので、法案を提出する段になってまた一から議論しなおすという事は普通ならば有り得ないことです。未成熟な政権党ならではの話だと思います。

自民党は与党時代、政府が法案を提出する際には、(1) 政務調査会傘下の関係する部会で議論し、そこで賛意が得られたものは (2) 政調審議会でその部会以外の立場からの検討が加えられ (3) 最終的に総務会で意思決定がなされる。という 3つの段階を経て党の意思決定となり、決まったものには党議拘束がかかる、という手順でした。

野党になった今でも、律儀に政府提案の法案や自民党提出議員立法はこの手順を踏み、綿密な意思決定がなされています。

かつて批判していた自民党のやり方を、必要に迫られて見よう見真似で倣おうとしている民主党ですが、意思決定の重さを全議員が自覚しない限り、何度でも今回のような混乱に陥ってしまいます。

かつて菅直人総理は自らの政権を「仮免許中」と表現しましたが、民主党自体が党として、いまだ『仮免許運転中』のようです。

さて、昨日 (17日) と本日 (18日)、自民党青年局の諸君と一緒に駅頭で東日本大震災による津波がれきの広域処理のキャンペーンを行いました。

「東京都に続け」とばかりに、神奈川の黒岩祐冶知事はがれきの受け入れを表明しましたが、焼却後の焼却灰を引き受けてもらう横須賀市の最終処分場は 10年に亘る地元調整を経てようやく設置されたものであり、県内の廃棄物に限るという制約が交わされています。そうした経緯もあり、唐突な表明に知事が集中砲火を浴びてしまいました。

県議会は全会一致で知事にエールを送りましたが感極まって議場で涙するという展開になりました。

国が傍観者でいて良いはずがなく、自民党神奈川県議団から要請を受け、私が党役員会で提案し、それを受けて谷垣禎一総裁が党首討論で働きかけ、その上で予算委員会で同志が質問し、政府がようやく重い腰を上げるという経緯をたどった案件です。

先に自民党は議員立法で震災がれきの広域処理の安全性と費用を国が保障する法案を成立させていますが、引き受ける自治体の不安と誤解は解消されておらず、引き受けの名乗りを上げた自治体には全国から反対運動家が押しかけデッドロックに乗り上げるという事態が頻発しています。国民の 7割は広域処理に賛成であるにもかかわらず事態が進んでいない現状に、自民党側から改善提案をしていった案件です。

がれきは津波によるものに限定し、搬出する際には放射線量を計測し安全を確認する。受け入れ自治体にかかる費用は国が負担する。あわせて、国が最終責任を持つ事を政府が宣言する。

課題は政府の決意と働きかけです。自民党はこの週末から全国でキャンペーンを展開しています。

学校の運動場や野球場、保育所の隣接駐車場等に山積みされているがれきを処理できなければ、被災地の復興はありません。

被災から一年を契機に、新たな絆の力を国内外に示そうではありませんか!

 

今週の出来事「伝統技法?」

 

神奈川県左官業組合連合会の 40周年式典に出席しました。

最近の住宅は伝統工法である漆喰 (しっくい) の壁が少なくなってきたため仕事が激減しているそうです。

漆喰といえば、レオナルド・ダ・ヴィンチ作『最後の晩餐』はミラノのサンタ・マリア教会の漆喰の壁に描かれています。何年に一度か修復で入場が制約されますが、反対側の壁に描かれている、無名の画家・モントルファーノ作の壁画は昨日描いたように鮮明です。

理由は、ダ・ヴィンチのは漆喰が乾いてしまってから描いたためすぐ劣化しますが、モントルファーノのはフレスコ画の本来の技法に従って漆喰が乾かないうちに画き上げ、絵の具と漆喰を同化させたため劣化がないという事です。

そうか!自民党も長老と若手を同化させれば堅牢になるんだ!

う~む、し (・) っくい (・・・) …いかない?!