国会リポート 第233号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

私が会長を務める自民党経済・財政・金融政策調査会は、次期総選挙マニフェストの柱になる日本経済の再生プランを策定するチームです。先般、中間報告を取りまとめました。

  1. デフレからの早期脱却を図るため、従来の常識にとらわれない大胆な金融緩和政策を行う。実質 3%、名目 4%の経済成長を巡航速度とする目標を明記する。
  2. 貿易立国単発型から、投資立国でもある双発エンジン型産業国家の経済モデルを構築する。
  3. ネオ経済成長戦略の具体的道筋をつけ、企業統合・オープンイノベーション等戦略的に取り組む。

等がタイトルです。特に国家経済モデルの再構築が大切です。

戦後、日本の発展を支えた国家経済モデルは貿易立国でした。原材料を世界の一番良い条件の地から輸入し、それを高度な技術で高付加価値の製品へと加工し輸出する。その外貨をもって石油や鉄鉱石等資源を調達し、国民生活にも還元をしていく。さらに、製品の市場への投入に関してより付加価値の高い高度なものへと転換をしつつ、市場をリードする。

この経済モデルに、暗雲がさす事態が発生しています。

昨年、実に 31年ぶりに貿易収支が赤字に転じました。そしてその赤字は構造的に定着し拡大する恐れがあります。直接の原因は定期点検後の再開ができない原発の影響です。これをカバーするために退役火力発電所に応急整備をして現役復帰させたり、小規模ガスタービン発電機を大量に調達し、それらに燃料供給をするための石油・天然ガス臨時調達費が兆円単位で増加したためです。

4月いっぱいで 54基の原子力発電所が全停止になれば、それによる支出は 3兆円を超えると言われていますが、それでもこの夏は乗り切れないと予測されていますので、さらなる企業の海外流出が懸念されます。福島の事故を踏まえた安全対策を施し、ストレステストをクリアした原発をどう再稼動していくか、政府の姿勢を企業の投資担当者は注視しています。

貿易赤字が拡大すれば、その数年後には経常収支が赤字に転じます。それは、国内の財政資金を国内では賄えないという事を意味します。日本国債が外国の資本に委ねられた時に、ギリシャのシナリオが現実味を帯びてきます。

経常収支は、荒っぽく言えば貿易収支に所得収支を足したものです。所得収支とは、外国に投資した配当や利子の収支です。サラリーマンの家庭に例えるなら、貿易収支は給与所得であり、所得収支は資産運用による所得です。

外から借金をしないで家計を運営していくためには、給与所得をカバーする資産運用収入を増やすというシナリオが大切です。幸い、今は史上最高の円高です。外国の優良企業や資源が日本にとって『お買い得セール』になっています。

しかし、我々が目指すべきはイギリスのような金融投資立国ではありません。今までの経済モデル、つまり、日本という国内に日本の経営資源を集中させ、そこから外に打って出るというやり方から、世界地図を俯瞰して日本の経営資源の適正配置を図るというやり方です。

国内に本社機能・研究開発機能・マザー工場を配置し、日本を世界のヘッドクォーター機能にしていく。国内で革新的製品・サービスを開発し、平準化でき次第、消費地の量産工場に投入し市場を取っていく。利益を国内に還流し、新たなイノベーションへと繋げると同時に海外有料資産の買い付けに回す。

日本が目指すべきは貿易立国と投資立国がお互いにシナジー効果を発揮して発展していく双発エンジン『ハイブリッド立国』なのです。

 

今週の出来事「大御所、侮り難し?!」

 

「こんなポスター、俺の選挙区には貼らねぇぞ!」

森喜朗元総理の怒声が部屋中に響き渡りました。

自民党の新しいポスターは今までと違いエッジの効いたもので、天空を指差す谷垣禎一総裁の顔には、左半面からだけライトをあて陰影を強く力強さを表現しています。どうやらその事がお気に召さないようです。

それもあって、翌日の新聞は全紙、写真入りでポスターを紹介していました。自民党のポスターが全紙写真入りで報道されるなんて結党以来の出来事です。

長老のお怒りとは裏腹に、ネット上では高評価が殺到しました。『見てみたけど悪くないよ。』 『なんか力強く爽やかで良いじゃん。』 『大体、長老が褒めるようなものにロクなものはないよ。』 等々、大反響です。

ここまで計算されての発言だとしたら…う~む、長老、侮れないなぁ恐るべし!

ん?誰が作ったポスターかって?広報本部長って誰だっけ?!