国会リポート 第187号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

米三大紙の一つ、ワシントンポスト紙の人気コラム欄に「鳩山総理は、いかれたアホウ (loopy)」との記事が掲載され、波紋を呼んでいます。

『先般ワシントンで開かれた核安保サミットに 47ヶ国 3国際機関が参加し、37ヶ国の首脳が集まりました。一番得点を挙げたのが中国の胡錦濤主席で、断トツの最下位が鳩山総理。「憐れでいかれたアホウ」と米政府高官達が囁いている日本の総理は、食事会でメインディッシュとデザートの間の 10分間だけ、儀礼的にオバマ大統領が会話を交わしただけで、ほとんど相手にもされず…』というのが記事の内容です。世界中に配信をされた米有力紙のニュースに、恥ずかしくて顔を上げられない在外邦人が増えつつあります。

大メディアがここまであからさまに一国の総理を嘲る事は例がありませんが、けしからんと抗議する前にアメリカを代表するメディアがここまで書かざるを得ない事の深刻さを真摯に受け止めるべきです。

政府の成長戦略の工程表が 6月に出される事になっていますが、昨年末に発表された民主党政府の成長戦略を改めて読み返してみました。

総論では、かつての自民党政治は公共事業主導型であり、市場原理型で生産性を上げて行くというやり方が選ばれた企業のみを発展させ格差を拡大し失業を増大させたと書いてあります。また、自分達は社会保障支出を充実させ (子ども手当て・高校無償化等)、格差を是正し消費を拡大すると書いてあります。

つまり、会社を元気にさせるのではなく従業員を元気にさせるという主張です。そのくせ各論を読んでいくと、私が経済産業大臣時代に取り組んできた事がいくつも掲載されています。産業の生産性を向上させ、イノベーションを起こしていくという内容です。

表紙が社会主義的思想で書かれ、各論が市場原理主義で書かれています。どうやらタイトルだけ自分達で作り、各論は各省のコピーを貼り付けたようです。

国費を支出して社会保障の受け皿を拡大するだけでは、一時的にその部分の雇用は増えますが、蓄積を使い切ったところでそのシステムは行き着いてしまいます。そこから新たなる付加価値創造、すなわち国富の形成がなされなければサイクルとして繋がっていきません。

そのキーワードは『民需主導』です。民間資本が入って来ない限り永続性はありません。医療や介護や福祉に民間資本が参入する、そこから新たなる技術革新や制度革新が始まり、イノベーションが起こるという事に繋がっていかない限り、単なる蓄積取り崩し経済に陥ってしまいます。

生産性の低い分野を洗い出し、生産性を引き上げれば日本全体の国際競争力は向上します。

民主党の農業補助制度は生産価格と市場価格の差額を補填する、いわば社会保障政策です。意欲ある農家は『努力と工夫をしている農家にこそインセンティブが働くべきだ』と、このやり方に猛反発をしています。

農業を社会保障政策として捉えるのではなく、産業政策として捉えていく視点が最も必要です。私が経済産業大臣の時に提案した「農商工連携政策」は、まさに農業の産業化なのです。

アメリカのピッツバーグは鉄と共に栄え、鉄と共に衰退しました。その後、医学系大学や附属病院が林立する事をバックボーンに、医療機器や医薬品の産業集積を図り、医科大や大学病院とコラボレートさせ、今や医療産業の町として復活しました。

「医は仁術」だけでなく、「医は産術」の思想が医療を発展させます。

 

今週の出来事「政界大変!(再編?)

 

「あれ?!俺の席がない!」

本会議のため議場に入ると、私の議席に他の人の名札が立っています。離党勧告はまだ受けていないはずなんだけどなぁ…。

議場をうろうろしていると、「甘利さん、こっちこっち。」同僚が手招きした方に行くと、そこは今まで与謝野さんが座っていた席でした。離党者が出た際は、その周辺の議席も移動する事があります。

今回は私がその余波を受けたわけですが「やれやれ」と席に着くと程なく、これも離党した鳩山邦夫さんが近寄って来て、両膝に手を置いて深々とお辞儀をしながら「お元気ですか?」と、例の人懐っこい笑顔で話しかけてきました。

「あれぇ?与謝野さんと新党を作るんじゃなかったの?」

「いやぁ、危うくひっかかるところでした。危なかった」

「えぇ?!鳩山さんの方からラブコールを贈ってたんじゃなかったっけ?」

どっちが化かしているのか、ホント政界はキツネとタヌキの雑居房みたい。真面目な私には向かないねぇ。いいかげん、見切りを付けた方がいいかな?

うん。とりあえず、総理になってから考えよ!

「…ん?向いてる?」