総 覧
年明け早々、藤井財務大臣が体調不良を理由に辞意表明を致しました。足取り軽く官邸に相談に行く藤井蔵相の姿に「どこが体調不良?」と思われた方は多かったはずです。辞意の理由を額面通りに受け止めている国会議員はほとんど居りません。
通常国会では、鳩山総理の 11億円の政治資金不正処理と、小沢幹事長の 16億円と報道されている不透明処理が予算委員会で激しく追及される事は明らかです。小沢幹事長を国会に参考人招致する事は民主党は党を挙げて何が何でも反対するでしょうから、出席閣僚に小沢氏周辺の金の流れを聞くとなれば、自由党時代に幹事長として 17億円を政党から交付された藤井氏が矢面に立つ事は明らかです。また、自由党解党時、本来なら政党交付金による内部留保金は国庫に返還しなければならないはずですが、不透明な処理のまま小沢氏の管轄下に置かれていると報じられています。その辺の事情を一番知る人は藤井蔵相であるがゆえに、辞意表明をしたというのが永田町の専らの見方です。
後任には菅副総理が就任致しましたが、鳴り物入りで設置した国家戦略担当相のポストをあっさり放り出しての就任です。マニフェストに掲げた最大案件とは、この程度の物だったのでしょうか。菅氏が日ごろから主張している財政論、すなわち『不況の時には政府が財政出動を通じて需要を増やし、好況期には歳出を削って国債償還を加速する。自民党は不況期だけでなく好況期にも歳出を増やし続け、その結果財政赤字が膨らんだ』という理屈はその通りだと思います。ならば、不況時の財政出動たる景気対策をどうして止めてしまったのか、説明がつきません。
需給ギャップが 35兆円あるために、デフレが拡大していると言われますが、民需が立ち上がらない時には官需で補う、即効性の高い物が公共事業ですので、効率と経済波及効果の高い物を厳選して執行すると言うのが経済学のセオリーです。麻生内閣の時に行ったミッシングリンク (繋がっていない輪を繋げる) 作戦による東京外郭環状道路の接続工事や羽田空港の滑走路の延伸等は、まさに作っている最中のみならず完成後の経済効果が高い物です。多くの公共事業を執行停止にしてしまったツケがデフレ宣言なのです。
『科学技術は 2番で良い』との事業仕分け哲学は、最先端の研究開発に携わっている研究者のモチベーションを著しく低下させました。外国政府や外国企業が、ここぞとばかり彼らをヘッドハンティングして良好な研究環境と予算の下に日本の技術を総取りされないとも限りません。iPS細胞で名を馳せた山中教授を始め、日本の著名な研究者たちは外国からの数倍の待遇のオファーを蹴って日本で研究を続けている事を忘れてはいけません。
鳩山総理の口癖は「供給側に立った経済対策ではなく、需要側に立った経済対策」という物ですが、需要側たる消費者のほとんどは企業の従業員です。供給側、つまり企業を元気にさせる経済対策がなければ、法人所得も従業員給与も上がっていきません。企業に関わる経済力が GDP の大層をしめる以上、供給側すなわち企業を元気にする政策なしに消費者が元気になる事はありません。
社会保障を充実して安心できる環境を作る事は大事な事ですが、鳩山政権には、社会保障の将来像を全体像として描いてもらいたいと思います。その際、高福祉・低負担のような幻想を国民に与えず、描いた全体像の社会保障を国民にどういう形で負担してもらうかをはっきり示す事こそ、責任ある政治だと思います。
パイの分配には熱心だが、パイを大きくする政策には無頓着。こう指摘された鳩山内閣が、ようやく経済成長戦略を提出をしました。自民党時代の物の焼き直しと言われていますが、具体的な行程表のもとに力強く推進される事を期待を致します。