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かつて 7割を超えた鳩山内閣支持率が 51%に落ちましたが、それでもいまだ高支持率を維持している最大の理由は事業仕分けへの評価であります。選挙区を歩いても「自民党ができなかった事業仕分けをやったのは大したもんだ」という声を各所で聞きます。
選挙の前までに組み立てた自公政権の予算案は、選挙後に新政権が各省に全面見直しを命じて組みなおしたわけですから、来年度予算案は概算要求の段階で民主党の手により編成をされた物になります。それを事業仕分けで「けしからん!」と言うのは自分で作った予算に自分でケチを付けているという事になるのですが、見せ物としては極めて痛快に映ります。
仕分け人が「スーパーコンピューターは何故 2番ではいけないんですか?!」とか「この予算をなくすと死人が出ますか?!」というような奇想天外な質問をしてくるものでありますから、要求側が絶句する場面が映し出され、絶句した方が負けという荒唐無稽なパフォーマンスで日本の将来が決まります。
オピニオンリーダー達が『パンとサーカス』と呼んでいる民主党政権のパフォーマンスは古代ローマ帝国で行われたものです。豊富な食料とコロッセオでの武闘ショーの提供により国民の歓心を買って政権を維持したポピュリズムの発祥でありますが、結局はそれが国を滅ぼす最大の原因にもなったわけです。子ども手当ては現代版「パン」であり、事業仕分けは現代版「サーカス」であるというのが識者達の懸念です。
公開で事業仕分けをして削られた予算の復活は小沢幹事長室で 4人の政治家により密室で行われてしまいました。何故その予算が復活したのかの説明は皆無であります。国政の要諦は外交と安全保障と経済成長戦略とよく言われますが、まさにその 3つが迷走してしまっている事を心配しない野党議員は居りません。
「トラスト・ミー (私を信じてくれ)」と言った翌日、「オバマは勘違いしている」と言い放った行為に、「鳩山キャビネットは誰も信用できない」とまでアメリカに思わせてしまった事をとても残念に思います。
アメリカ側は『日本に関わっていると恥をかくし自分の経歴に傷が付く』という事で無関心でいようという空気が急激に広まっています。知日派や親日派の肩身が狭くなる事は、日米の信頼関係にとって極めてマイナスです。
アメリカで最近流行っているジョークは「鳩山のトラスト・ミーは発音が悪くて、実は『トラッシュ・ミー (私を捨ててくれ)』の間違いだったんだ」というものです。
年70億円で評価の高かった給油支援を敢えて止めて、年900億円のばら撒きに変更するアフガニスタン支援。世界一CO2排出割合の少ない日本が更なる世界一の負荷を負う約束と 1兆7500億円を支援する約束。国内に目を転じれば、あらゆる公共事業が止まり倒産の嵐の中、何の効能もない金融モラトリアム法案。
これらのギャップが国民に表面化した時にはもう取り返しがつかない事態になっているのではと心配し、こうしたリポートを通じて警鐘を鳴らし続けています。
また、小沢幹事長による、天皇陛下への指示とも受け取られかねない会見要請発言。天皇の政治利用への懸念を表明した羽毛田宮内庁長官に対し「辞表を出せ」とか「陛下のお体が大変なら、他の仕事は止めて会見すれば良い」と陛下の日程を差配するような発言は驚天動地としか言いようがありません。
私が最大に懸念する事は、現場のマスコミ関係者が非常な危機感を持っていながらそれらがほとんどメディアに載らない、政権に対するメディアポピュリズムです。さすがに新聞は危機感を感じてきたようですが、テレビにはそれが全くありません。
となれば「最近のリポートは愚痴ばかり」と言われようとも、我々が警鐘を鳴らし続けるしかありません。
「子ども手当てでぬか喜びしていたら旦那の会社が倒産した」そんな事にならないようやるべき事を提言し続けます。