国会リポート 第156号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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新年度の追加総合経済対策が、先週金曜の経済対策関係閣僚会議で決定致しました。真水 (財政出動額) で 15.4兆円、事業規模で 56.8兆円の史上最大規模の経済対策です。G20 で米・英が要請した「GDP の 2%規模の財政出動を」という数字を超える、日本の GDP 規模の 3%にあたる財政出動の大型経済対策です。

省エネ自動車への購入補助金、省エネ家電へのポイント制度、住宅購入資金の頭金 (610万円まで) を親から贈与された場合の贈与税の免除、子育て支援や女性固有の癌検診無料化、中小企業金融の更なる支援、さらには失業した非正規労働者への職業訓練と生活支援等々、極めて骨太の政策が出来上がりました。4月 27日には経済対策補正予算案と関連法案が国会に提出される予定です。本会議代表質問を経て衆参予算委員会や財務委員会等で議論されますが、民主党が協力してくれれば 5月中・下旬には成立できるはずです。

今回の対策で私から総理への提言は、一過性の使い切り型景気対策ではなくて、財政出動が需要を喚起しその需要が新たなる政策原資を生んで行くスパイラル型財政出動にすべきだという事でした。公共事業で言えば、ミッシング・リンク (欠けている環) という言葉に象徴されるように、環状線の一部が欠けている事によって全体の機能が半分も発揮されていない道路をしっかりと繋いで経済効果を飛躍的に引き上げる、という様な理念に基づくものです。

省エネ自動車や省エネ家電の買い替え促進をする事は、需要の創出と同時に、さらなる省エネ技術開発へと誘導していきます。独立行政法人や企業の研究開発の支援は、機材の発注や雇用の創出を通して具体的需要の追加になり、加えて研究の成果として将来の競争力強化が図られ、次なる政策原資が生み出されます。

また、中小企業の研究開発支援は仕掛り品を優先的に仕上げてしまう事も総理に進言しました。国が予算とテーマを決めて公募するのも結構ですが、ゼロからスタートさせるよりも研究開発の途中で資金手当てが付かないために止まってしまっている研究開発を仕上げさせる方が景気対策と競争力強化を同時に達成させます。

ケインズ経済学的に言えば、ただ穴を掘って元に埋め戻す事だけでも仕事や機材の発注を通じて需要の追加には貢献しますが、何ら競争力の強化には繋がっていきません。財政支出が競争力強化策に繋がりそこから新たなる富(次なる政策原資)が生まれる、このプラススパイラルを組み上げていく事が課題なのです。

G20 と言えば、「麻生総理の存在は薄かった」などと日本のマスコミは『朦朧 (もうろう) 報道』しましたが、外国プレスにおける存在感は大変なものでした。

前日、フィナンシャルタイムズは一面で大きく麻生総理を取り上げました。「世界経済危機に対する財政出動の重要性への理解が足りない」と、麻生総理ドイツのメルケル首相に厳しく指摘したという事で一層存在感が増していましたが、需給ギャップが民間で埋められない時には国が財政出動を通じて需要を追加していくというのは、経済の原則です。ただ単なる消費型の一過性の追加ではなく、消費が新たなる付加価値を生んでいくというところに繋げていく工夫が大事なのであり、麻生総理は見事にそれを主張したのです。

先日、『南米の暴れん坊』ベネズエラのチャベス大統領が訪日した際、麻生総理はスペイン語でジョークを飛ばし一気にチャベス氏にシンパシーを感じさせたそうです。いよいよ『外交の麻生』の面目躍如です。

トヨタウェイとレッドクリフ、1800年を超えた歴史が今を教えてくれます。

 

今週の出来事「色んな才能

 

先日、鳩山総務大臣の奥様鳩山エミリさんから、ご自身の作の色絵皿を頂きました。鳩山夫人は大倉陶園の陶芸教室で 30年間絵付けを勉強されて、現在は国内外で講師としてご活躍中だそうです。10年ほど前に、大倉陶園の絵付け教室の作品展に行った時、気に入った作品を譲って頂いたという話から、こういう事になりました。

開けてみると見事なバラの絵皿で、アマチュアの域を超えたプロの作品でした。出来栄えに感心した話を鳩山大臣の秘書官にしていると、「そんな事より、今週の出来事のコーナーで、うちの大臣を褒めて頂く件はどうなったんでしょうか?」と催促されました。そういえばそんな話を鳩山大臣にしたっけなぁ?

『…ちょっと待ってよ。今、良いところを探している最中なんだから。あと半月もすれば、きっと見付けられると思うから。』

『ん?』

本当の話、才能溢れるとっても面白い人ですよ。何てったって私が気に入っているのは天然ボケのところだなぁ。

あれ?余計まずい事になっちゃったかな…。