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G20 金融サミットの報道振りを見ていると、中国の胡錦濤主席の存在が目立ち、日本の麻生総理の存在感がなかったかの様な報道がなされています。相も変らぬマスコミの外国コンプレックス・自虐報道には、いささかゲンナリしてきます。
と言うのは、胡錦濤主席の発言の裏には、数ヶ月前の麻生・温家宝会談の成果が色濃く出ているという事を、感ぜざるを得ないからです。
そもそも、G20 では金融規制に積極的で財政出動に消極的な独・仏と、金融規制に消極的で財政出動に積極的な英・米との対立構図がありました。日本は財政出動では英・米寄り、金融規制では独・仏寄りのスタンスで臨んだわけです。中国は日本とほぼ同じスタンスでありましたが、ドルに代わる基軸通貨として世界共通通貨の必要性を主張した点が、極めて革新的主張と受け止められています。
昨年 12月、麻生・温家宝会談の際、中国側から基軸通貨のあるべき姿を問われたと言われています。麻生総理は「世界が安直に比重をユーロに移せば、中国が持っているドル債権は価値を落とし兼ねないし、ユーロには基軸通貨たる覚悟も実力もまだ備わっていない。」とコメントしたと言われています。
温家宝首相は当初の会談アジェンダを無視して矢継ぎ早に麻生総理に質問を浴びせ、麻生総理の返答を克明にメモしていたそうです。会談の最後に、今後とも金融経済危機への対処に関してはアドバイスをもらいたい旨、発言したと言われています。
ドルにせよユーロにせよ、特定の国の通貨が世界の貿易決済の手段として使われるためには、その通貨の信用を維持するための各種制約が必要です。ドルの発行国たるアメリカは、その権限ゆえに、必要ならいくらでもドルを刷り増す事への自己制御を、どう構築して行くかを考えて行かなければなりません。ドルをユーロに代えたところで、同じような危惧は残るわけです。
そこで、中曽根元総理が主張しているようにドルやユーロや円や元等、主要国の通貨をバスケットでカウントする IMF の SDR (特別引出権) のような世界共通通貨を作れば、金融経済危機への影響を最小限にする事が出来るという論があります。すなわち胡錦濤発言は麻生・温家宝会談に中曽根元総理発言を加味したものだという事を、日本のマスコミが最初に気付いていかなければならないのです。
併せて中国は、IMF に 400億ドルの出資を表明しました。これもマスコミが好意的に評価をしていますが、前回の会合で日本が 1000億ドルの融資を世界で最初に表明し、金融危機への対応の手本を示した事を日本のマスコミは覚えているのでしょうか?世界には色んなサミットがありますが、世界マスコミサミットを開いて頂き、自国の政治に対するバランスの取れた報道というものを体得してもらいたいものです。
さて、平成21年度予算も成立し、新たなる景気対策が本格論議になってきました。今、政府が弾込めをしている原案の産業政策部分なかんずく中小企業部分には、3週間前、私が総理に文書で提言したものがほとんど採用されました。4月中旬までには対策案の詳細が決定しますが『先進国の中で一番早く不況を脱する日本』との公約実現に向かって、私も最大の努力をして参ります。