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私の担当は国家公務員制度改革や規制改革を始めとする行政改革全般ですが、国家公務員制度改革について言えば、在任中にどうしてもやらなければならない課題は天下りの根絶に向けたまったく新たな公務員制度の構築を図る事です。
渡辺元行革大臣の時になされた改革は、各省ごとに行っていた再就職支援は各省の関係団体や企業に斡旋するので押し付け的になる、そこで各省ごとの斡旋は禁止して政府に一元化するというものでした。そうすれば、本当に必要とされる人材を、役所の権限を行使する事なく適材適所に紹介するというものになり、より透明性を高めるものでありました。制度は渡辺氏が作り、運用は官房長官がするというものです。しかし、依然世間からの批判は『天下りの根絶にはなっていない』というものです。
そこで私が就任以来、100年ぶりの新しい公務員制度を作り渡辺元大臣の残した課題に決着をつける、という事であります。
そもそも、なぜ再就職の斡旋が必要になるかといえば、国家公務員はどんなに真面目に勤めていても途中で辞めなければならない仕組みになっているからです。全員が定年まで勤め上げられるだけのポストはないし、一部は是正されたといえ、年齢が上がれば上がるほど自動的に給料が増えるという現在の給与体制では予算的に持たなくなりますし、平行して進めている総人件費削減改革とも矛盾をきたします。そこで、何の瑕疵もない公務員に対して肩たたきをし、50歳そこそこで辞めてもらう、いわゆる『早期勧奨退職』が慣例として行われています。
本人の同意をとったという形をとるために、役所を辞めさせた後の再就職の紹介をするという慣例です。全体の人件費を増やす事なく、真面目に働いている人は定年まで勤める事ができるという新しい国家公務員制度を作らなければこの問題は解決しません。
そこで、能力・実績に基づく評価を徹底し、昇進もあれば降格もある、ある年齢から上には幹部ポストを離れたら減給をされる、という民間型の人事給与システムを導入するための改革を現在進めているところです。渡辺元大臣が基本設計をし、私が詳細設計を行い関係各省との折衝をしているところです。
その省の存亡がかかるという受け止めのため、省庁間の抵抗は想像を超えるもので、交渉は難航を極めております。財務省を説得し、総務省をやっとの事で了解させ、最後の砦である人事院を説得中です。事務レベル交渉の段階から人事院だけは延々とゼロ回答で、まったく協力する姿勢を見せてもらえません。「真摯に協力をして参るつもりですが、ご趣旨に副うことはできません。」という意味不明な回答に終始しています。
数度にわたる事務折衝の議事録資料は 7~8 センチの厚さになりましたが、相変わらず「仰っている事の意味が分かりませんので、回答のしようがありません。」との返答です。業を煮やして、先般トップ会談を行いました。一時間にわたる話し合いを行いましたが、この改革の意味を理解してもらえません。誠意を尽くして会談を重ねますが、ある時点では政治決断をしなければならないかもしれません。
渡辺元大臣はテレビに向かってヒーローを演じていれば良いのでしょうが、身を粉にして汚れ仕事をやっているのは、この私です。総理からは「甘利さんを信頼しているので、信ずるままに前進してくれ。」と激励をして頂いているのが唯一の救いです。