国会リポート 大臣退任特別号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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8月 2日午後、新旧大臣の業務引継ぎをもって、1年 10ヶ月にわたる、経済産業大臣の職を無事終了致しました。雨の日も風の日も私をお支え頂いたすべての皆様に心から感謝を申し上げます。

当初、一年程度の在任期間を想定しておりましたが、思いもかけず長期にわたりました。そしてその分だけ普段から思い描いていた構想も実現する事ができました。数々の政策提言、法案提出を通じ将来への道筋を描く事はできたと思います。

戦後の日本の発展は『東洋の奇跡』とか『20世紀の奇跡』と世界から称されています。中国、インド、ブラジルなど新興国の追い上げを受けている今、我々は『21世紀の奇跡』を起こすための挑戦を開始しなければなりません。

20世紀の奇跡の背景には、教育水準の高い勤勉な国民の知恵と努力が逆境を順境に変える力になりました。お金もない、資源もない、国土も狭い日本が条件の悪さを嘆く事なく、資源がないという事は世界中の最良・最廉価の資源をふんだんに選択して使える強みへと変え、お金の無さは貯蓄の振興と効率的資本投下という知恵を生み出し、狭い国土は太平洋ベルト地帯という効率的産業基盤形成へと発展をしていきました。そして何より、知恵を共有するという日本民族の良き伝統的精神・チームワークがターボエンジンとなりました。

21世紀は 20世紀からパラダイムシフトが起きています。人口減少は消費力や労働力の低下へと繋がり、高齢化は資本の取り崩しへと繋がり、財政再建、環境エネルギー制約は経済成長への新しい制約要件となっています。大きな逆境の中で、これを順境に変えていく知恵と努力と協働が必要です。

20世紀は借金を重ねながらした成長、21世紀は借金を返しながらする成長です。国内消費が減るならば、国内と同等に活動できる対象経済領域を拡大する。私が精魂を傾けた日・ASEAN 経済連携協定は、ついに発効します。これを東アジア全体の経済連携協定へと繋げていくシンクタンク (東アジア ASEAN 経済研究センター) も、ジャカルタに日本の出捐で設置が決まりました。

さらには日本と海外市場との関係をどう位置付けるかが極めて重要です。日本をイノベーションセンターとし、そこで開発された製品やサービスを海外市場に投入し、そこで上げた利益を日本に還流する。そのための装置を作るための来年度予算や税制改正に向けた政策提言も完了いたしました。

5月 2日の読売新聞の一面トップに私の提案が掲載されました。海外に積み上げてある日本子会社の純利益 17兆円を日本に還流させ、それをイノベーション投資や国内賃金の引き上げなどに繋げていく。さらにはその資金還流とイノベーションを結びつける官民共同ファンド「イノベーション創造機構」の設立提案は、21世紀の奇跡を起こすための基本インフラです。

7年前に私が政策提言した「知的財産国家戦略」と相まって、必ずや数年後には、この閉塞感を打破し 21世紀の奇跡へと力強い歩みを始めると確信しています。何より忘れてならないのは、日本民族の良き伝統、チームワークです。
天才が 10人居てもそれだけでは奇跡は生まれません。トヨタ自動車を今日世界一に導いた力は、年 40万件に及ぶ全従業員からの改善提案であった事は、改めて我々が肝に命じることだと思います。

私が国内に設置した 316ヶ所の地域力連携拠点は、地域中小企業が持つ技術やノウハウを市場へと繋げていくアドバイザーやプロデューサーを数多登録し地域金融機関・公設試、そして地域行政機関が集い連携をとる拠点です。行政機関を己がツールとして使い倒して、国内外の市場へと繋げていく拠点であります。

企業立地新法、地域資源活用法、甘利ファンド、知財戦略 AMARI プラン、農商工連携、中小企業事業承継抜本改革税制、資源外交、温暖化防止セクター別アプローチ等々数え上げればキリがありません。『史上最強の経済産業大臣!』 経産省若手官僚からの称号は私にとっての最高の勲章です。