国会リポート 第139号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

最近 NASA の会というものが随分マスコミの注目を集めるようになりました。

1・2年前、麻生太郎氏を囲んで中川昭一・菅義偉そして私甘利明がホテルオークラのバーの一室でいろいろと意見交換をした際、麻生氏がそれぞれの頭文字を取って NASA の会と名付けようと言い出したのが発端です。この会には安倍元総理も参加したことがあります。マスコミで言われているような政局を操る様な意図はまったくなく、談笑しながら忌憚ない意見を交換し、認識を共有しようとする会で、麻生氏のストレス解消の場になればと思っています。

政治家にとって大切な事は判断を裏打ちする情報が偏ってしまわないことであり、いろいろな視点から判断材料が提供されることが重要です。このメンバーはそれぞれの視点から考えていることを言い合い、より適切な方向性を共有しようとうするものであります。気さくな会ですから頻繁にやるということになっていましたが、政局がらみでこうも騒がれるとかえって集まりづらくなってしまいました。

福田総理が突然の辞意を表明し、総裁選が行われるとなった際、私はいち早く菅義偉氏と連絡を取り、中川昭一氏と三人で打ち合わせる事にしました。麻生氏が本命であることは当然でしたが、前回のどんでん返しもあり、また麻生派自身は勝つための戦いをすることに慣れていないという懸念がありましたので、故に裏選対として我々が戦略を組まねばならないと思っておりました。

この三人のメンバーに尾身幸次氏に参加を呼びかけ四人で数回会合を行い、若手への展開、中堅以上への展開の段取りをとり、若手への展開は田中和徳氏や、山口泰明氏の協力を得、中堅以上への展開は各政策グループから 1人ずつ代表を依頼し、6・7名のメンバーで連日打合せ会を開き、併せて表選対の構成もしていきました。終盤には、麻生総裁候補にも顔を出して頂き、政策のすり合わせを行いました。

この裏選対は、連日会合を行ったにもかかわらず、とうとう最後までマスコミに察知されることはありませんでした。「みんな口が堅いということが確認されたなぁ」「いや、全然注目されていないのかも知れませんよ」一切表に出なかった事に不思議な達成感がありました。『菊作り菊見るときは陰の人』という思いで裏方に徹してきたつもりです。麻生内閣はお友達内閣とか揶揄されますが、人事に関し私や鳩山邦夫氏が麻生氏に進言したのはただ一点「派閥への配慮をはじめとする一切の配慮は無視をして、これぞ麻生人事というのをやってください。任期は長くないはずですし、『This is ASO。文句あっか。』で良いではないですか。」という事でした。その上での入閣ですから、在任中に私にしか出来ない特命大臣としての実績を挙げる決意です。

さて、この号がリリースされる頃には、アメリカの新大統領も決まっています。選挙の前に両候補がカメラの前で幾度となく政策論を戦わし、国民の判断に資する環境を作ったのは至極当然の事であります。それに比べて選挙を控えて未だ一度も党首討論が行われていない日本の状況は、外国メディアには極めて異質に映るはずです。麻生総理の再三の党首討論の提案を小沢一郎氏はそろそろ受けるべきです。選挙戦が党首討論そのものだ、との民主党の論理は党首討論のシステムそのものを否定してしまいます。

 

今週の出来事「表現の自由?

 

本会議場の、雛壇ではない閣僚の自席は最後列になっています。麻生総理の隣が鳩山総務大臣、その隣が私の席です。

閣僚の失言が時に政局になることがありますが、同じ失言をしても深刻な問題になってしまう人とそうでない人がいて、それは政治家のキャラが関わっているように思われます。鳩山大臣は典型的な後者です。氏は麻生総理を囲む「太郎会」の会長であり、余程気さくな関係で波長が合うのか、我々ではとても言えないようなブラックユーモアを総理にすら時々発します。先日の事。

〇鳩山大臣 「総理になられるとそのプレッシャーは想像を絶するものなんでしょうね。でも、あれだけ色々とマスコミにバッシングされながら、めげないで元気でいられる能天気さはどこからくるんでしょうか?」

〇総理 「ひでぇこと言うなぁ。(大笑い)」

〇甘利 「言い回しが間違っているんじゃないの。それは前向きだと言うことですよ。」

〇総理 「いやぁ、いい表現だ。それで行こう。」

鳩山氏越しに二人でガッチリ握手!!