国会リポート 第138号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

世界金融不安は、タイムラグを置いて実体経済へと押し寄せてきます。

信用不安が落ち着いても株価が記録的な下落をすれば、金融機関の保有している株による資産は大きく目減りし、自己資本比率を押し下げます。国際取引銀行 8%、国内取引銀行 4%との自己資本比率基準を守るために、金融機関は新規の貸し出しには極めて慎重になります。それどころか、不良債権化する前の回収へと走るため、年末・年度末の資金繰り、ことに中小企業の資金繰りには万全を期さねばなりません。私はこの点を閣僚懇談会において指摘し、さらには中小企業庁長官や商工中金総裁に対し、再三注文をつけてきました。

先般成立した補正予算では、中小企業に対し信用保証協会による保証枠 6兆円、政府系金融機関による融資枠 3兆円を準備しました。これは遅くとも 11月 1日には発動できる体制を整えています。併せて直ちに作成に取り掛かった 2次補正では追加保証枠 7兆円、融資枠 4兆円、合計 11兆円の資金枠を準備しています。1次・2次補正を合計すると 20兆円の融資枠を用意いたします。

加えて私からは「これで足りるのか?金融不安のマグニチュードをしっかりシミュレートするように。」と要請いたしております。加えて 10月 1日からスタートした新政府系金融機関の設計が、このような世界的事態に対応する基本設計になっているのか大至急検証せよ、と指示してあります。

この金融危機を乗り切っても実体経済が回復するまでには 2年程度の辛抱が必要だと思われます。その間に、短期の景気対策と合わせながら中長期の成長へと結びつける経済構造改革が必要です。

私は、行政改革と同時に規制改革も担当しています。規制改革は、行政による規制を見直すことにより技術革新と新しい産業の目を伸ばしていくものです。私の下には規制改革会議という有識者の議論の場がありますが、最近思うことは、どうも案件が小粒でマニアックになり過ぎていて経済効果がいま一つのようであることです。ここにも手詰まり感があります。

私は、かねてから考えていた大胆な案を政治主導で実現しようと思っています。その提案とは、今までタブー視されていたライフサイエンス分野の規制改革です。「医は仁術」医療の分野にビジネスが参入することを拒否していた決まり文句です。しかし、医療の分野にビジネスが参入して初めてイノベーションが起き、患者の治療の不可能を可能にすることができるのです。

ライフサイエンス分野に関し、年末までに数点の画期的提案をしようと思います。そのささやかな序章として、先般、閣僚懇でピロリ菌検査および除去の保険適用提案をいたしました。胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんの原因のほとんどは、この菌による仕業です。潰瘍認定がなされて初めて保険対象になるのではなく、検査から除去までその対象にすれば、胃がんの発症は激減し、医療費は大幅削減されます。今、桝添厚労大臣に検討してもらっています。年末に向けての大胆な提案と併せて注目していてください。

 

今週の出来事「渡る世間は鬼ばかり

 

公務員を辞めた人が省庁の斡旋により、複数の法人を渡り歩くことを「渡り」と呼びます。

年内に設置が決まった「官民人材交流センター」では「渡り」を禁止しますので、中立で透明なルールが出来上がります。省庁の管理職の数は限られていますので、一定年数を経た幹部職員にはいわゆる「肩たたき」が行われます。

法律で身分保障の付与されている公務員をリストラする際には、本人の承諾が必要ですので、辞めてもらう代わりに再就職先を紹介するのが慣行になっていますが、当事者の省庁がそれを行えばどうしても予算や権限を背景にした押し付けとの疑念を抱かれます。そこで、中立で透明な情報提供機関「官民人材交流センター」を渡辺大臣の時に設置することを決めたわけです。

これに関する質疑を参議院予算委員会でやっていた時に、委員長が「甘利大臣」と指名するところを「わたり大臣」と言い間違えたものですから、場内大爆笑。

頭を掻きながら答弁に立った私は冒頭「確かに私の初当選は新自由クラブで、その後、自民党に移りましたが、移動したのは一回だけですから。(二回以上の移動を渡りと呼びます)」と、やったものですから、再度、大爆笑。

そういえば、渡哲也も石原裕次郎が亡くなった後、石原プロひと筋だもんなぁ…。

支離滅裂…。