国会リポート 第130号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

日本の課題は一言で言えば借金を減らしながら経済成長をしていくという事です。'70 年代のオイルショック以降、今日まで日本は借金を増やしながら経済成長をしてきました。しかし、国債の利払いに 20 兆円も要している中で少子高齢化社会を運営していく事は、遠からず限界を迎えます。

現在の歳出 83 兆円の内訳は、利払い費が 20 兆円、社会保障費が 22 兆円、地方交付税が 16 兆円、残りの 25 兆円で防衛から教育、外交、経済援助から国土政策から農業政策、産業支援エネルギー政策まですべての政策経費を賄っています。

現在の超低金利時代の利払い費ですら 20 兆円ですから、金利の変動によって 25 兆円、30兆円と跳ね上がる事態も予断を許しません。超低金利のうちに一刻も早く対 GDP 比国債残高の比率を減らし体力を温存していかなければなりません。そこで、一般歳出予算全体を拡大せずに経済成長をする事が至上命題となります。

私が提唱している手法は以下の四点です。

第一は、予算の 「燃費効率を上げる」 事です。10 リッターで 100 キロ走る車を 150 キロ走らせるには、従来の発想では 15 リッターの燃料が必要です。しかしエンジンの燃費効率を上げれば 8 リッターで 150 キロを走る事も可能です。現在の予算のあり方 『前年度実績主義』 では母数の少ない政策予算は永遠に伸びていきません。前年度予算を大胆に一律カットし、集めた予算を付加価値の高い政策に重点投入すべきです。

第二は規制改革の推進です。その際、単に過当競争に陥る懸念がある分野は慎重に、新しい起業の可能性の高い分野は大胆に、という目利きが必要です。

第三は地域に散在する官民の経営支援を徹底的にコラボレートさせる事です。今月から中小企業のための地域連携拠点を、公募により全国 316 箇所整備し、運用を始めます。商工会・商工会議所、農協・漁協から民間金融機関に至るまで、我こそはというところが支援拠点に立候補してきました。これらの拠点に大学、公設試 (試験研究所)、大企業 OB 人材、地域金融機関等がコーディネーター・サポーターとして登録されます。また、拠点がお役所仕事にならないようにユーザーによる満足度調査をし、結果を発表します。つまり、316 箇所拠点同士の競争が始まります。

第四は民間資金の活用です。海外に留保された企業資金は 17 兆円におよびますが、内外の法人税の差のために日本に還流されません。海外で納税した資金はそのまま日本に還流され、イノベーション投資や賃金に還元される事を提案し、国内イノベーションの拡大と、その結果の競争力強化による海外市場の獲得の好循環を形成します。また、そのための研究開発コンソーシアムを促進する制度を作ります。

私が提案する以上の大宗は、国家戦略として採用されるはずです。

 

今週の出来事「何じゃボックス?

 

経済産業大臣室には世界各国の閣僚の訪問がひっきりなしという事は前にもお話したと思います。

外国の閣僚のリクエストが最も多いのは、総理を除けば外務大臣と経済産業大臣という事で、多い週には三ヶ国の閣僚を迎えます。会談が終わるとお土産交換をする事が恒例となっていますが、複数回来られる方も居るので工夫が必要です。

最近使っているのは、寄木細工の忍者ボックス (からくり箱ですが、開けるのに 10 行程ぐらい要るのでこう呼んでいます) です。

「写真で示す通りに動かしていかないと絶対開きませんから奥さんに秘密の物を入れるには最適ですよ!」 と言葉をかけると、敵 (?) もさるもの。「日本との交渉はこの箱を開けるほど難しくはないんでしょうね。」

これからは 3 回で開くやつと 100 回掛かるやつと二つ用意しとこう (笑)