国会リポート 第80号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

閣内・閣外で財政再建への道筋を巡り、摩擦が生じています。

谷垣財務大臣は 「消費税の引き上げなしに社会保障の給付を賄いながら財政再建をする事は不可能」 と発言しました。竹中総務大臣や中川政調会長は 「デフレの脱却と高めの経済成長、更には徹底的な行政改革で乗り切れる。谷垣発言は時期尚早」 と財務大臣の姿勢を批判すれば、すかさず与謝野経済財政担当相が 「谷垣大臣を批判する人たちは、日本の財政状況の深刻さを本当に理解していない人たちだ」 と切り返ました。更に総理は APEC 会合の随行記者団に 「私の意図を理解しない与謝野大臣や谷垣大臣は見当違いな事を言っている」 と発言し、いよいよ気まずく重苦しい空気が閣内・党内に拡がっています。

先日、日本テレビの CS 放送番組に出演した際、司会者からこの点を問われました。私は 「両方とも間違っていない。消費税増税なしに財政再建が出来るなどという事はありえないし、その前にデフレの脱却と徹底した無駄の見直し、歳出削減・行政改革が必要というのもその通りで、要はそれら全てを行なう手順・スケジュールの問題だけです」 と答えました。

国・地方合わせた日本の債務残高は今年度末で 774 兆円です。GDP 比 150% を超えている国は世界の先進国の中には存在しません。最悪と言われたイタリアですら 150% を切っておりました。問題は、今から改革に取り組んだとしても毎年度 30 兆円以上の赤字が積み増されてきた現状は突然ゼロになる訳ではありませんから改革に今着手しても債務残高は 200% に達してしまうという事をどれくらい深刻に受け止めるかです。専門家の見解では 200% を超えれば国債価格は暴落をし、突然利払い費が急増し身動きが取れなくなると言われています。2010 年代初頭にプライマリーバランスの黒字化を図る、つまり利払い費を除く歳出はその年の税収で賄えるようにする、その為には今あるギャップ 15 兆 9 千億を一刻も早くゼロにしていかなければなりません。支出を減らす方と収入を増やす方でこれを埋めていく訳です。今は超低金利ですが、金利が上がればその分だけ国債の利払い費も増えていく訳で、このギャップもその分だけ広がる事になります。

名目成長率を上げていけばその分だけ金利も上がり、利払い費も増えるところに悩ましい点があります。テレビ番組の最後に財政再建のキーワードをボードに書いて欲しいと言われ、私は 『合わせ技』 と書きました。消費税を含め色々な手立てを順序良く実行していく事しか解決策はありません。

 

今週の出来事「制度改革?

 

かつて、ピンクレディーのヒットメーカーとして一世を風靡した作曲家の都倉俊一さんをコンテンツ産業振興議員連盟の会合に講師としてお招きしました。

「作曲家を始めとするアジアのクリエイター達が日本に来たがるのは、自分が製作に携わった作品がヒットした場合、利益の配分の権利システムがアジアで一番整備されているからです。いまだ未整備な舞台上演、つまりライブの各種著作権を形にできればアジアのアーティストは皆、日本を目指しますよ」

と話をされました。つまり、『制度を整備すれば人材が集まる』 という事で、目からうろこが落ちる思いでした。

そういえば、この種の自民党の会議もホリエモンとか女優とか、有名人をゲストに呼んだ時だけ議員がやたらと集まるなぁ。

あれ?!ちょっと違うか・・・。