国会リポート 第79号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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10 月 31 日に小泉政権最後の組閣が行なわれました。「今回、サプライズは無いよ」 との総理の言葉でしたが、最大のサプライズは盟友山崎派の入閣がゼロという事件でした。

派内は大荒れで、小泉総理や山崎拓会長を糾弾する声で溢れました。翌日の山崎派緊急総会で、山崎会長が自分の至らなさを詫びた後、司会が 「何かご意見がありますか?」 と出席者に尋ねた際、異様な沈黙が続いた事が事態の深刻さを物語っています。後日、事の真相を山崎会長に尋ねても 「訳が分からん」 と言われるばかりです。

新聞はこぞって 『盟友関係終焉』 とか 『山崎派使い捨て』 とか書きますが、真相は闇の中です。かく言う私も入閣最有力候補と目されて居ましたので、党内各派の議員が驚くことしきり。「甘利さんは絶対入閣すると思っていたのに」 と度々声をかけられ、いささか辟易気味。そこへ中川秀直政調会長から山崎会長に、「甘利さんを政調会長代理に出して欲しい」 と連絡が入りました。もう全くの無役で居よう、と心に決めていましたが 「我が派の為に受けてくれ」 と説得され、受ける事になりました。

その後、中川政調会長から電話があり 「あれだけ頑張ってくれたのに申し訳ない。是非、私と一緒に自民党政調会を担ってくれ」 と要請がありました。派閥こそ違いますが、中川先生の思いやりには、いつも頭が下がります。

ところで小泉総理が宇宙人だと思われるのは、あれだけ山崎拓会長に大恥を掻かせておきながら、小泉内閣の最重要難関案件である 『沖縄問題を始めとする米軍トランスフォーメーション』 の党側責任者たる安全保障調査会長就任を山崎氏に 直々に要請し、安倍晋三官房長官に、総力を挙げ て山崎氏に協力するように指示するものですから、余計何を考えているのか分からなくなります。森元総理の言うように、まさに小泉さんは 「変人以上」 です。

さて、政調会長代理は久間章生氏 (現総務会長)、柳沢伯男氏 (税制調査会長就任予定) と歴代大臣経験者が務め、自民党の全政策を取りまとめるポストとして近年脚光を浴びています。党本部 6 階に個室を与えられ、最も忙しい要職の一つになりました。『人間万事塞翁が馬』。ここでしっかり政策を勉強し十ヵ月後に備えたいと思います。

 

今週の出来事「間違い電話

 

私の後任の予算委員長になった同期生の大島理森議員に、本会議場で

「甘利ちゃん、官邸から呼び出しの電話がなかなか掛かって来なそうだったら、俺が官邸を騙って電話かけてやろうと思ってたんだけど」

とジョークを言われ、

「冗談じゃないよ。騙されて官邸に出向いて 『先生は呼んでません』 なんて言われた分にはカメラの前で大恥かくじゃないか・・・」

そういえば亡くなった小此木彦三郎先生の地元秘書が組閣の際、議員会館の秘書に 「官邸ですが・・・」 と冗談で電話を掛けるや否や 「先生、官邸から電話です!」 と今か今かとジリジリしている本人に繋いでしまったものだから大汗を掻きながら詫びる秘書に 「バカヤローッ!!」 と怒鳴ってガシャンと電話を切ってしまったそうで、このエピソードに組閣の際の議員心理が良く表れています。