国会リポート 第66号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

ライブドアとフジテレビによるニッポン放送株の取得をめぐる戦いは、第二ラウンドに入りました。

第一ラウンドでは、ライブドアがニッポン放送を通じてフジテレビを間接支配することを排除できるだけの株数を、フジテレビ側が市場公開買い付けを通じて確保しました。その結果、フジテレビがしのぎ、さらに逆転攻勢に向けてニッポン放送と組み、新たに発行するニッポン放送株をすべてフジテレビが引き受けるという奇策を編み出しました。

これを実行すると全体のパイが大きくなるため、すでに 42% 持っているライブドアのシェアは限りなく小さくなります。ニッポン放送の取締役会が決めさえすれば株主を無視して何でもありという事になり兼ねず、法律論から言えばとても認められない事だと思っていましたところ、裁判所はその通りの判断を下しました。

ライブドアの堀江社長によるニッポン放送株取得に関するこれまでの行動は、あまり褒められたものとは言えませんでしたので、心情的にはフジテレビを応援したいと思っていましたが、今回の件に関してだけはちょっと無理があると思いました。

両者の戦いは一勝一敗のまま第三ラウンドに突入します。ライブドアは引き続きニッポン放送株を買い続け、過半数を押さえて取締役を解任し、息のかかった人間で取締役会を構成し、今度はライブドアに有利な増資を行いフジテレビの持ち株比率を下げさせ、フジテレビに対して、より影響力を行使できるための戦略をとるでしょう。

この事件に関し度々取材を受けますが、論点は二つに整理されます。

  1. 電波という公共財を使う放送局には放送法で政治的中立が求められ、社会インフラとしての責務が付加されています。
    故に外国資本が 20% 以上の株を所有した時には、放送免許は取り消されます。ライブドアはリーマンブラザースという外国資本を導入していますので、放送局の株の 20% 以上を間接的に外資が取得したということになります。現行法上は直接取得までしか規定していませんので、法律上はセーフですが、外国ではこの場合も禁止しています。
     
  2. 放送とインターネット・IT産業が有機的に連携する事によって、今までにないダイナミックで魅力的な事業展開が可能になります。

1. と 2. をどういう視点から整合性をとっていくか、法の整備を含め英知を結集する事が求められます。

 

今週の出来事「危機管理は身近から…

 

予算のスムーズな衆議院通過に尽力した代表 4 人が夫妻で谷垣財務大臣からフランス料理に招待されました。ワインの話から小泉総理の話、はては郵政民営化まで硬軟取り混ぜた話題で大変盛り上がりました。

いつも通りふるまっていたつもりですが、谷垣大臣から

「甘利さん、奥さんと居ると何かいつもより寡黙だよねぇ?」

「いつもより慎重に言葉を選ばないとね。」

取り敢えずかわしましたが、帰りの車の中で

「色んな人に言われるけど、確かにあなたは私と居る時にはいつもより口数が少ないみたいね」

「あ…いや…そうかなぁ?」

(ったく、谷垣さんも余計な事を言うから…)

皆さん、奥さんと二人だけで外出すると緊張しません?