国会リポート 臨時号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総覧「えせ環境族襲来」

環境税論議が盛んです。

地球温暖化の原因となる炭酸ガス (CO2) や、メタンガス、フロンガスの排出量を減らそうという世界の動きは、1990 年の気候変動枠組み条約京都会議から今の枠組みがスタートしています。EU は 7%、日本は 6%、アメリカは 5% それぞれ温暖化ガスを減らすという合意でした。

私はその会議の一つに出席し、CO2 を大量に出している中国やインドなど皆が入れる削減の枠組みを作らなければ意味がない、と強く主張してきましたが、結局先進国の一部だけで行うという EU 案を環境庁 (当時) がゴリ押しし、押し切られてしまいました。

日本は世界で一番省エネルギーが進んでいる社会ですから、日本で 1 トンの CO2 を減らす努力を、中国やインドなど他の国で行えば、10 トンの CO2 が減ります。空はつながっていますから、地球規模で努力をしなければ意味がないのは自明の理です。

日本には環境税と名前が付いている税はありませんが、石油税や電源開発促進税、そして先年、私が仲間と苦労してまとめあげた炭素税など、温暖化防止対策に資する税は、世界で最も充実している国の一つです。自動車は世界一省燃費・クリーンエンジン型になりましたし、家電製品も世界一省エネ型になりました。

京都会議での約束を達成するために更なる努力を積み上げ、工場でいくら減らし、トラック運輸でいくら減らし、建築基準法改正で家屋やビルに断熱材を義務付ける等々、合わせ技で目標を達成する案をわれわれは提案しました。しかるに、河野太郎議員を始めとする環境族と称する方々は、新たな税だけ課ければ問題は解決するかの様な主張で徒党を組んでいます。

この 14 年間で経済規模ははるかに大きくなっているにもかかわらず、産業界は血の出る様な努力で CO2 を 1.7% 減らす事に成功しました。これを 2010 年までにさらに 6 ~ 7% 減らす政策も作りました。問題は運輸 (自家用車・トラック輸送) と民生 (家庭・オフィス) が 20 ~ 30% 、CO2 が増えてしまっているという事です。日本の産業界のエネルギー効率は世界一になりましたから、つまり産業界は減っても消費者の排出分が増えているという事です。

環境派の人たちは 「国民に温暖化の危機感がないのはけしからん」 と言いながら、成果を挙げている産業界に更にペナルティを課すという、支離滅裂な主張です。消費者に警鐘を鳴らすなら 「環境消費税」 とすべきはずですが、相変わらず取りやすい所から取る、という発想です。

「増税はしないで CO2 削減に取り組む」 という真面目な政策提言をしている我々の主張には耳を貸さず、ひたすら環境税を叫ぶ姿は独善的な政治のおごりすら感じます。

自分たちは経済産業部会に大挙して乗り込んで、原発 (燃料再利用政策) 反対を叫んだ事を棚に上げ、環境部会に我々が出席して正論をぶつ事は 「悪の手先襲来」 などとメールマガジンで非難する。まるで 「自分の事は棚に上げ」 を地でいっています。

為にする批判はしない、というのが私もモットーですが、毎回インターネットで不正確な批判をバラ撒くやり方は、とてもまともな政治家のする行為とは思えません。

憂鬱な気分の中、これをしたためました。