国会リポート 第404号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 いよいよ緊急事態宣言が発動されました。向こう1ヶ月間不必要な移動は極力避けてもらうという体制が法に則ってとられます。「人の移動は即ウイルスの移動」、「人の密集は即ウイルスの共有」という意識を持つということです。若い人や体力に自信のある人は自分だけは罹患しないと過信をしがちですが、症状が出ていなくとも自身がウイルス保有者かもしれないという認識を持って行動制限を自らに課すということです。人の密集するところには行かない、密閉空間に多数で入室しない、多数で騒がしくしているところには参加しない、ギュウギュウ・ムンムン・ガヤガヤ3つの密の排除です。世界中で政府首脳をはじめ多数の著名人が罹患しています。日本で政治家から一人も罹患者が出ていないのは七不思議ですが議員が顔を合わせれば第1号にはなりたくないとの話題です。自分がどんなに気を付けていても周りが気を付けてくれなければ罹患するリスクがあります。コメディアンの森三中の黒沢女史が罹患したと報道がありました。彼女は人一倍潔癖症で自身には相当注意を払っていたという報道ですので、周りが意識を持ってくれないと効果は半減するということの証です。 

 都市封鎖を強制的にすることは日本の立法上できません。憲法22条に公共の福祉に反しない限り居住移転の自由は侵害されないとあります。この場合の公共の福祉は憲法解釈上相当限定されています。憲法に非常事態項目を設けない限り、外国と同じような措置を取れば超法規的措置となる可能性があります。今回の新型コロナウイルスの事態は日本及び日本国民にとって、極めて遺憾なことでありますが、戦後初の緊急事態の際に法整備の不備を検証しておくことが極めて大切です。憲法は為政者の行き過ぎを監視するという役目がありますが、国民の命を守るために必要な国民への制御は憲法上明確にしておいたほうが法治国家としては正しいやり方です。戦争のような非常事態下にあっても超法規的措置というのは、法治国家が取ってはならない選択です。この緊急事態下に法や行政手続きの不備をしっかり検証しておくというのも政治の大きな責務の一つです。

 緊急経済対策が発表されました。その中で一番注目を引くのは収入の激減した家庭への30万円の給付措置です。金額自体は適切な措置との評価ですが、実施手法に困惑の感が広がっています。つくづく、ため息が出るのはマイナンバーカードが全国民に行き渡っていさえすればこの種の施行は瞬時に完了するのにという思いです。マイナンバーカードの保有者が国に自身の専用口座を届出しさえすれば瞬時に各種給付金は振り込まれる。行政コストも時間も混乱もありません。未だ2,000万人しかカードの取得者がいないデジタル途上国の日本では、アナログ方式で対応するしかありません。マイナンバーカードを配布する際、ナンバー盗用リスクばかりが喧伝されました。テレビでコメンテーターやニュースキャスターが、そして新聞・ラジオ・週刊誌で番号漏洩のリスクの警鐘が鳴らされました。その結果、ケースに目隠しを入れるとか鍵のかかったところで保管するとか利便性を侵食するような対応ばかりがされました。デジタル先進国エストニアで政府CIO(最高情報責任者)から受けた個人番号のレクチャーでホワイトボードに最初に書かれたのは、彼の個人番号でした。個人番号は知られても何の支障もないという説明からレクチャーは始まりました。確かにクレジットカードより複雑な暗証番号がなければ盗まれようとただのプラスチックカードということは確かです。常時持ち歩くには利便性が必須です。マイナンバーカードに保険証を搭載し、カードの必要性を一刻も早く高めることが必須です。

 

今週の出来事「もう止めたら?」

 4月1日から健康増進法の完全施行となりました。議員会館の自室で悠々と喫煙していた政治家もフロア毎の喫煙室まで出向かなければならなくなりました。

 可哀そうなのは秘書さんたち。以前から部屋を出て喫煙室で肩身の狭い思いでタバコを吸っていたのに、そこは大物国会議員で占拠されています。恐る恐る入室して隅っこでせわしなく喫煙をし出ていきます。かえってストレスになってるんじゃないでしょうか?

 恐らく今後タバコの箱の警告表示が変更されると思います。『喫煙はあなたの健康への悪影響は否定できません。<特に議員秘書は心も病む恐れがあります。>』(笑)