国会リポート 第401号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 21世紀最大の米国の(先進国の)誤算は、先進国が途上国であった中国を支援し、中国が経済発展を成し遂げて行けば、その先には中国は国際社会を担って行くオブリゲーション(大国としての立場から生ずる応分の責務)を自ら持ち国際社会への建設的参加をして行くとの誤解でした。中国の発展は却って共産党独裁体制を強固にし、途上国としての既得権と大国としての傲慢さとを戦術的に使い分け、自身の地政学的国家目標を軍事力と経済力、技術力を軍民融合させて、一大覇権国家へと邁進させる結果となりました。米中摩擦がどう展開していくのか、その収束はいつか。よく受けた質問です。表面上の貿易摩擦の決着は米大統領選挙に関連し一定の結論を得ましたが、深層たる技術覇権紛争は両国の命運を決する課題であるだけに10年、20年戦争となります。問題は日本がどの立ち位置でどう過ごし、どう両国に関与していくのかということです。

 アメリカと中国の関係は基軸国とこれに挑戦する新興国の関係になぞらえます。パックス・アメリカーナ、アメリカによる世界秩序に挑戦する勃興国中国。勃興国の自信過剰とおごりが基軸国に自信喪失と不安を生み、焦燥感を惹起しています。中国は一帯一路で陸と海のインフラを中国仕様で整備し、そのツケを巧みにインフラ利用国に付け替えています。中国版GPSシステム北斗による運航システムにインフラ利用国は命を委ねます。近年発表されたデジタル人民元構想は国際決済システムもドル基軸体制を逃れ、中国独自決済地域を構成して行くものです。それはすなわちアメリカによる経済制裁の最終兵器、ドルによる国際決済の停止を無力化させます。元が国際決済通貨になるための最大のハードルは元の資本取引の自由化です。それは中国共産党独裁体制を揺るがしかねないという理由から向こう10年間は不可能というのが専門家の見立てです。しかし、それが可能かどうかはわかりませんが、国内市場とオフショアとを使い分けて対応する等あらゆる知恵を出してくることは間違いありません。中央銀行による通貨のデジタル化はかつての仮想通貨とも先般ニュースになったFacebookによるデジタル通貨リブラとも異なります。仮想通貨は投機対象でありリブラは基軸通貨の裏打ちによる信頼性はありますが、金融政策を民間の手に委ねるリスクを抱えています。だとすれば中央銀行による通貨のデジタル化はそれが進みだすと爆発的にシェアを取りかねません。今日考えて明日実行できるものではありませんから、デジタル元の進捗に合わせいつでも立ち上げが出来る準備はしておいたほうがいいと思われます。

 中国デカップリング政策は中国を機微技術のサプライチェーンから外し、技術漏洩のリスクに対処しようとするものです。いわば21世紀版ココムとも言えますがココムとの違いは技術優位が必ずしも西側だけにあるのではないということです。東側(中国)に優れた技術と推進する体制が散見される中でどう西(米国)陣営の技術優位を進展していくかが課題です。併せてアメリカ市場か中国市場かではなく、アメリカも中国もという民間経済の実情とどう擦り合わせていくかが課題です。どの分野なら中国市場で共同して展開できるのか、どの分野は避けるのか、戦略的取り組みとファイアウォールが至上命題となります。中国を封じ込めるのではなく、中国を我々が持つ共通の価値観(自由と民主主義と法の支配をベースとした価値観)によるルールベースに、今改めて、米国だけでなく日本としてもどう招き入れるかを考える必要があります。しかしそれが体制の根幹を揺るがしかねない中国とは折り合いがつかない歴史をどう耐え忍んでいくかということです。

 

今週の出来事「♪大人の階段上る・・・」

  毎朝40~50分歩いて国会登庁していた習慣が途絶え、次第に朝のウォーキングが面倒になるにつれて体重が5キロ増えました。

 危機感を覚え、会館の5階の部屋まで1日2回階段を使うようにしました。すると歩き方によって大きな違いがあることが分かりました。つま先だけで上がっていくと4階で息絶えます。足の裏全体で上がっていくと5階まで無事たどり着けることが分かりました。

 使う筋肉の部位によってずいぶん体力に影響があることを発見しました。呼吸もリズムを取ってすれば疲労度は減ります。

(そんなことなら毎朝歩いて行けよ(笑))