国会リポート 第397号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 令和二年度からの細かな政策税制を決定する自民党税制調査会の審議が終わり、与党税制改革大綱が先般決定を致しました。それにより、来年度税収が確定し、来年度予算案が編成されます。12月20日で政府原案となる税・予算案が完成しました。今期は税制改正の重要案件は少ない、いわゆる裏年と言われていましたが、終わってみれば史上最高のマスコミ報道量となりました。日経新聞の税制調査会長単独インタビューが1面トップにここまで大きく取り上げられたのは異例でそれを皮切りに、新聞テレビネットでたびたび取り上げられました。しまいには、私に税制調査会のトランプの名称までいただきました。今年が税調の表年を凌駕するような報道になったのは、予定されていた案件の査定作業のみならず、将来の課題を税制であるべき姿に誘導する問題提起が行われたからだと思います。

 今年の大きなテーマは、1点目、国境を超え物理的拠点を持たないデジタル産業が時価総額のベスト10を席巻しているにもかかわらず、世界中の課税体制が経済形態に追いついていない点。国際課税には従来、PE原則(パーマネント・エスタブリッシュメント原則)というものがあります。つまり、支店や工場のような物理的拠点がない国際企業には、その国、つまり市場となっている国での課税ができないというルールです。サービスを展開し、データを集め、その市場国から利益を上げているにも関わらず、課税することができず、更にその企業は低課税国に色々な名目で利益を集め、課税逃れと云われる様な行為をしている。これらの国際デジタル企業にそれぞれの市場国としてその国からの利益に相当する税を還付させるという仕組みです。OECDが中心となり、課税システムのコンセンサスを図っているところですが、党税調として議論をし、あらまほしき姿への案へと誘導していかなければなりません。

 2点目はデジタル経済、データ経済のインフラとなる移動体通信の次世代の施設整備です。5G(第5世代無線通信網)の運営者となるドコモやKDDIやソフトバンクや楽天はその基地局の装置を4Gから5Gへと更新していかなければなりません。この敷設競争に勝った国がデータ駆動型社会の一歩先を行けるわけです。サプライチェーンリスクを含む十分なセキュリティ対策を盛り込んだベンダーを採用し、さらには補正予算による基金を通じてそのベンダーの研究開発を支援し、次の世代、6Gの先頭を走らせる、加えてドコモを始めとするキャリア4社には設備投資減税により導入を圧倒的に加速させる。三位が一体となって情報流出やデータ流出の心配のない5Gシステムを構築していく。

 3点目はひたすら積み上げられていく、いわゆる、内部留保中の現預金の有効活用を税で誘導する政策です。日本の中堅大企業、なかんずく成熟した大企業は、ともすればリスクをとった事業革新に後ろ向きで守りの姿勢に入りがちです。リーマンショックのトラウマから脱しきれず、まさかのために貯金を増やすという守りの姿勢です。世界がデジタル経済化、データ経済化していく中で、旧態依然としたビジネスモデルではどんなに預金があろうとも生き残りは不可能です。預金を大胆に自社の事業革新のためにベンチャーの斬新なアイデアを取り込むという新たなオープンイノベーション税制を構築しました。

 4点目が、歴史を重ねる中、都度都度対応でパッチワークとなってしまった、ひとり親に対する寡婦控除制度の課題です。男性ひとり親と女性ひとり親との差別、既婚のひとり親と未婚のひとり親との差別。これらを一挙に全て平等なものに、改革いたしました。信念と決意さえあれば解決は可能という証左です。

 

今週の出来事「♪もう逢えないかも知れない」

党税調では議員が税制改正の方向性を決定すると、詳細なすり合わせ作業は改正要望官庁と査定官庁たる財務省、総務省との間で、ときに徹夜の協議が行われます。

経産省某局長と徹夜のすり合わせをした財務省某局長は、「家内といる時間より遥かに長く◯◯局長と議論を重ね、ようやく合意案がまとまりました。いわば敵味方で協議を重ねている間に、何か特別な感情が湧いてきたような気がします(笑)」、

インナー会議での報告に「好きになっちゃったんじゃない?」と私が応じて、大爆笑。

菊池桃子さんが男に嫉妬する事態にならなければいいなぁ(笑)