国会リポート 第394号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 11月、12月は自民党にとって一番忙しい時期になります。税調(税制調査会)が始まり来年度税制改正、数百の改正項目が議論をされ、12月の上旬に税制改革大綱としてまとめられます。税制度が確定すると次年度の税収が確定し、それをもとに予算編成が行われ、下旬には政府原案として閣議決定されます。予算案は翌年の予算委員会に提出され審議が始まるわけです。今年は、というよりも今年も新年度予算に先駆け災害対応や景気対策のための補正予算編成がスタートしました。予てから総理は消費税引き上げ後の内外の景気動向を注視し、必要とあらばマクロ政策を発動することに躊躇しないと宣言されていました。問題はその規模です。

 昨年は補正と特別な予算措置を通じ、6兆円規模の対策を行いました。昨年と今年の経済環境を比較すれば今年の状況が不確定要素が多いという事は自明の理です。だとすれば確実にこれを上回る経済対策が必要になります。災害対策、国土強靭化と合わせ科学技術・イノベーション振興対策は必須です。財務省の打ち出しをかなり上回る議論になろうかと思います。その際留意すべきは今後1年を見通し、どう間断ない経済対策にしていくかという視点が重要です。今次の補正予算は年明け早々の審議になり、オリパラの景気へと繋げていき、更にはオリパラ後を「宴の後」にしてしまわない工夫が必要です。来年の秋に準備したのでは時宜を得ない対応になります。ポスト・オリパラ対策の予算執行のタイミングを工夫する必要があります。

 先週末、選挙区に帰り商工会議所関係者と話をした際、現場では景気の減速を体感し設備投資を抑えるという話でした。下請中小企業は元受けの調達見通しに応じて投資を調整せざるを得ませんが、元受け企業は事業革新のための投資を躊躇してはいけません。リーマンショック後の金融機関の対応の無力さに、自分の身は自分で守るという意識の下、内部留保を積み上げていった企業は政権交代後のベクトルの転換で投資環境が整った後にもその傾向を大きくは変えませんでした。投資はようやくリーマンショック前を超えてたにせよ、内部留保はまさかに備えるモードのままでした。100年に一度の変革と言われる、デジタル革命・データ革命のさなかにあって、レガシーモデルのままではこの大変革を乗り切れないという自覚を経営者は持つべきです。今回提言しようとするM&A税制は成熟した事業会社が事業革新を行うためのベンチャービジネスの取り込みです。貯金を切り崩して危機を乗り切るのではなく、モデルチェンジをして危機を乗り越える選択をできるかどうかにかかっています。「発現せよ第2創業!」「出でよ中興の祖!」社史に残る経営者となりうるかトップの力量が試されています。ツールは用意します。使いこなせるか否かはトップの判断と力量です。

 さて、その税調は自民党の各部会から上がって来る税制改正要求に○×△をつけて査定をする作業が主なものですが、私は予てから党税調は税の政調会として政策誘導を提言すべきとの思いがありました。現在OECDが取り組んでいるデジタル課税に事業会社まで組み込まれようとしています。市場の規模に応じて税金が取れるデジタル課税はその市場のデータが付加価値となります。しかしそうではない事業会社にとっては大問題です。付加価値の源泉が本拠地での研究開発投資にある事業会社と付加価値の源泉が各国の市場から得られるデータによるものを同一視した税制は大問題です。時すでに遅しの感がありますが、税調が政策誘導すべきだったという思いは正にそこにあるのです。

 

今週の出来事「震えるほど感動的?」

天皇陛下御即位を祝う国民祭典が6万人とも言われる人々の参加で盛大かつ厳粛に開催されました。20年前の上皇陛下の御即位10周年記念祭典を思い起こす感動的なものでした。

もう一つ当時の経験値から私は防寒対策を完璧に出席しましたが、初めて出席する若い議員は背広一枚で出席している者も目立ちました。すると党税調副会長を兼ねる清和会・安倍派の細田博之会長は事前にホッカイロを大量に仕入れていて、背広一枚で震えて座っている議員達に配ってあげていました。

「さすが総裁派閥の会長は気配りが違うねえ」

「でもホッカイロ一個で派閥をまとめられたら随分安上がりだよね」

『100円で一人だと派閥をまとめるのに9000円ちょっと?うん。コスパは最高(笑)』