国会リポート 第388号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 朝日新聞から取材の申し入れがありました。データ駆動型社会への対応を誰より先んじて警鐘を鳴らした政治家として取材をしたいということです。2年近く前から米国や中国のプラットフォーマーが社会の変革を起こすだけにとどまらず、統治機構と結びついて世界を席巻しかねないとの警鐘を鳴らしてきました。人間の物理行動や消費行動を詳細に把握しデータ化して分析をすれば、あらゆる嗜好パターンや行動パターンも解析できます。自分のことを世界中で一番良く知っているのは、自分自身でも母親でもなく為政者だったということになりかねないわけです。特に独裁国家がその社会インフラを自在に操れば、それ自身が永遠の統治システムとなるとの警鐘です。

 一方で、データは集積すればするほどその能力が強化されるという事実があります。独裁国家が個人情報保護を無視してデータを集め続ければ、民主主義国家が個人情報保護に配慮して集めるデータとの集積力の差は国家の競争力の差に繋がりかねません。個人情報を適切に保護しつつ、匿名化されたデータのフル活用を行う。つまり盾と矛の両立が要になります。日本で言えば個人情報保護法はいわば盾の役割です。(しかしまだまだ不備なところはあります。)そして、官民データ利活用促進法は矛の役割です。盾だけが強化されていたらデータ駆動型社会は機能不全を起こします。矛だけ、つまり利活用だけ優先されれば個人情報は為政者の下に丸裸にされます。盾と矛のバランスが大事です。そして、もっと大事なことはそのバランスの取れたインフラが国際システムにならなければならないということです。

 独裁国家がこのツールを統治機構に駆使すれば、独裁国家の下に科学技術や経済発展や軍事力のアドバンテージは圧倒的になります。データの保護と活用の整合性を取りつつシステム全体を飛躍させるという民主的ルールが世界ルールにならなければなりません。中国方式かアメリカ方式かあるいは第三の道か。結論から言えば、どちらかの陣営に入らざるを得ないというのが実情です。独裁国家中国の傘下か、独善的指導者のアメリカの傘下か、二者択一を迫られれば自ずとアメリカという結論になります。というよりは、アメリカのGAFA(Google・Amazon・Facebook・Apple)の傘下に入らざるを得ないという事です。楽天やヤフー!ジャパンのような国内版準プラットフォーマーもありますが、これがGAFAや中国のBAT(バイドゥ・アリババ・テンセント)に伍していけるとはとても思えません。日本には最近、個人情報を預けて活用を委託する情報銀行というものが出来ました。金融機関系や製造業系が創設する情報銀行が林立する中で、数億、十数億単位の個人情報を集めている世界のプラットフォーマーには対抗しようがありません。情報銀行の持っている個人情報の「保護と活用のバランスよい仕組み」をGAFAに導入させるというほうが手っ取り早いのではないでしょうか。幸いGAFAの多くは個人情報保護に関しEUのGDPRに準拠するという方針を打ち出しています。情報化社会が抱いている懸念をGDPRの様なルールを通じてGAFAに刷り込んでいくという方法が近道でしょう。

 では日本は傘下に入るだけなのかといえば個人情報に関してはプラットフォーマーの傘下に入らざるを得ずとも日本が持っている強みは産業情報です。各種製造機器等から得られる地球規模のリアルデータをクラウドに集積し活用する。既に企業毎のスモールクラウドがスタートしていますが、せめて業種毎のクラウドに集約しインターオペラビリティ(相互運用性)を高めるという戦略を採るべきです。

 

今週の出来事「一足早いクリスマス?」

森元総理や小泉元総理を始め政財界のお歴々とご一緒する機会がありました。話題は当然進次郎氏とクリステルさんとの慶事。

「いつ頃報告があったんですか」

「一月くらい前かなぁ?」

「披露宴はやらないんですか?」

「あれだけマスコミが披露してくれたからやらなくてもいいよ。それに誰を呼んだ呼ばないで大変だし。」

「それにしてもよく誰にも知られずに付き合えましたよね」

「家から一歩も二人で出られなかったらしいですよね」

「それって彼女の家?」

際どい?話も飛び交いながら最後は森元総理が乾杯の音頭

「みんなグラスを持って。では、二人の結婚を祝して、メリー・クリステル!(笑)」

12月だったらもっと受けたのにね(笑)。