国会リポート 第371号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

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 今年もあと一週間になりました。年末のイベントに出る度に「前回からもう一年も経ったんだ。つい2~3ヶ月前に去年のイベントに参加したような気がするな」と歳月の過ぎる早さを実感します。時間の速度は年齢を重ねるほど加速するとよく言われます。人生における加齢と過ぎ行く一年間の関係は年齢を分母に一年を分子に置くと、なるほどと納得できます。歳を重ねるほど分母が大きくなり、割り算の答えは小さくなっていく。つまり、一年のスピードは上がっていくということです。「去年のこのイベントはついこの間参加したような気がします。この分でいくと来週はゴールデンウィークですかね。」とのジョークは年末の定番になってきました。

  さて、米中新冷戦時代への突入や米国の追加利上げに伴う米株安の影響で日経平均株価は今年の最安値を更新しました。株価が下がると円は上がるという定石通り、円高傾向になっています。円高になると輸出はマイナスになり、景気に影響を与えます。金融緩和の出口戦略を始めるべきだという一部の議員や識者はいますが、金融経済は1か所をいじると直ちに他に連動するという事態を甘く見てはいけません。日銀が国債買い入れを縮小し、利上げに向けての道筋を宣言すれば、金利の上昇、株価の暴落、円の高騰を招き、インバウンド(外国人観光客)も減っていきます。変動金利の住宅ローン借り入れ者は返済計画が破綻します。設備投資は減り、輸出が減ればまた元のデフレへ舞い戻ります。市場にとって悪いニュース(金融引き締め)はひそやかに、市場にとっていいニュース(金融緩和)は想定外の驚きになるように運んでいくのが中央銀行総裁の腕です。「マイナスは織り込み済みに」「プラスはサプライズに」が手腕の目安です。日銀・黒田総裁は国債買い入れ枠80兆円にコミットしながら年度を締めてみれば実績は60兆円。一部の識者がステルス・テーパリング(姿の見えない出口戦略)と呼んでいるのが事実としたら、黒田総裁もなかなかのやり手です。

 こうしている間にも、米国株価は一年半前の水準まで大幅下落をし、日経平均株価は2万円を切りました。中国の景気が低迷をし、周辺国の対中輸出も影響を受けています。米中間で強制技術移転や、知財の盗用と米国が指摘している問題について中国が何らかの改善策を提示しない限りこの問題は前進をしません。アメリカ政府調達のサプライチェーンに関する対中国デカップリング(サプライチェーンから外す行為)は、かなり現実味を帯びた行動になっています。

 この枠組は、ファイブアイズ(諜報情報を共有する旧英連邦)へと広がりを見せています。各国各企業が中国市場を手放せるわけがない、と高をくくっている中国や中国企業もアメリカの姿勢が本気であることに狼狽を隠せません。アメリカの対中国警戒感は、トランプ政権になってから醸成されたものではありません。数年来の懸念が具体的形となって表れたのが今と理解をしたほうがいいと思います。「アメリカの技術や知財を流用し、孔子学院を先兵として大学や研究所やシンクタンクに影響力を及ぼし、中国批判を抑えつつ先端技術を取り込んでいく。そしてそれを軍事技術に転用し、アメリカを脅かす。中国も成熟化をすれば、国際社会を支えるオブリゲーションを持つと期待したのは間違いだった。」これが、アメリカの対中国に対する姿勢の変化の土台です。各国各企業は世界第二の中国市場に参加しつつ、アメリカのデカップリング政策のターゲットにされぬよう、どうすみ分けをしていくかが問われていきます。

 

今週の出来事「政界の竹内涼真・・もどき?」

 保育園の父母会250名程の席で講演を依頼されました。「只今ご紹介をされました竹内涼真・・・とよく間違えられる甘利明です。」とスタートしたら爆笑が起きました。今をときめくイケメン俳優の竹内涼真さんは若い女性層に絶大な人気です。

 おそらく敬老会でこう切り出してもポカンとされるだけだと思います。聴衆がどういう層か、どういう話や話題に興味を持っているか、最初の一言で推し量ることができます。

 先週自民党女性局での講演で同じ枕詞を使ったら大爆笑でした。

  『自民党女性局って思ったより若いんだなぁ・・・気持ちは。(笑)』(セクハラ寸止め(笑))