国会リポート 第365号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

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 「来年は選挙の年。新内閣にとって勝負の年になる。是非ともその指揮官を引き受けてほしい。」確かに来年は4月の地方統一選挙、7月の参議院選挙が重なる12年に一度の年です。これをどう乗り切るかに内閣の命運がかかります。想定外の要請ではありましたが、総理からの懇請を断るわけにはいきません。党四役の選挙対策委員長を拝命した次第です。

  党総務会で幹事長以下役員承認手続きが終わると四役記者会見の後、官邸に場所を移し、大臣呼び込みに立ち会います。閣僚として呼び込まれた経験は幾度となくありますが、党役員として総理に陪席し、それを待ち受ける立場は初めてです。かつて政調会長は経験をしましたが、野党自民党最後の政調会長で与党に復帰したとたん入閣したため、その経験はありませんでした。次々と緊張した面持ちで総理執務室に呼び込まれた大臣を「あぁ、自分もこうやって呼び込まれたっけ。」と客観的に待ち受ける景色は妙に覚めた感覚です。

 さて、次第にデータ覇権競争が熾烈さを増しています。第一ラウンドはアメリカ勢のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)や中国勢のBATJ(バイドゥ、アリババ、テンセント、ジンドン)等、世界のITプラットフォーマ・デジタルプラットフォーマがインターネットインフラとして世界を席巻しました。世界中の誰もがこれらにお世話になる時代になった訳です。そして、これからの3年、なかんずくこの1年はインターネット戦争がデータ戦争へとステージを移していきます。「データを制する者が世界を制する。」の基本原則に則り、熾烈な覇権競争を展開していきます。医療や介護の投薬・施術・リハビリやその後の経過等のデータや世界中の工場の稼働データと自動運転車の稼働データ、そして全ての決済データ等、全ゆる分野のデータを収集し、解析し、ソリューションを導き出す。その主体になれるか否かの競争です。  GAFAがホワイトハウスと対立しているのを尻目にBATJは習近平政権の先兵として世界展開を始めています。彼らの電子決済システムが日本に上陸し、インバウンドの中国人だけでなく日本の消費者をその対象にしたら日本のあらゆる情報は中国政府に吸い取られます。一刻も早くメイド・イン・ジャパンの電子決済システムを張り巡らす必要があります。その必要性を早くから警鐘を鳴らしていた私の提案もあり、キャッシュレス協議会がようやくスタートしました。そういう意味でこの1年は致命的に大事な1年となります。幸い、デジタルエコノミーの第一人者平井卓也氏がIT担当大臣に就任したのは極めて時宜を得た人事です。(私からも強く進言しておきました。)岸田政調会長に党側の広範な受け皿を作るよう要請し、政務調査会の組織を抜本的に見直すつもりとの返答を受け、ほっとしたところです。

 

今週の出来事「共に白髪を染めるまで。」

 役員改選後の行事の一つとして、改選役員による挨拶回りがあります。党四役と国対委員長等自民党改選役員が勢揃いで衆参正副議長から始まり各党役員に挨拶回りを行います。

  大島衆議院議長(同期生です)室にて

「甘利さん、こういっちゃなんだけど白髪になった方が貫禄が出ていいよ。幹事長(同じく同期生)はともかく(染める対象が乏しい?)他の役員さんは染めてるの?」

「実は私・・・」

「・・・私もそうです。」

と次々告白。意外と皆若作りをしてることが判明しました。

 


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