国会リポート 第357号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

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 6月15日の閣議決定を目途に経済財政運営の基本方針、いわゆる骨太方針が今週から党内議論に入ります。骨太方針は次年度の予算編成や税制改正の基本方針となるものです。これが党内了解手続きを経て、閣議決定されるとそれをベースに8月末までに各省から財務省に向け、次年度予算に対する 概算要求が行われ、秋には次年度税収の基本となる税制改正の作業が行われます。

 さらに12月中旬の与党税制改正大綱、直後の予算の財務省原案の提示、引き続く各省との復活 折衝を経て、下旬の政府予算案へと繋がっていきます。各省の役人や議員が躍起になるのは、実際にはそうでもないのですが、この骨太方針に盛り込まれているか否かで、その政策が来年度予算上有利に扱われるかどうかが決まる、と思っているからです。

 骨太方針には次年度の政策の柱に据える項目が何本か立ちます。その重点項目に入れるか否かが最大関心事になるわけです。今回の政策の重点化項目は2点。人づくり革命と生産性革命です。骨太方針は次年度以降の政策の方向性を示すものですから、予算や税の関係者が注目するのは当然ですが、入ったからOK、入らないからその政策は不採択というわけではありません。しかし近年は骨太方針に書かれたか否か、なかんずく政策の柱に書かれているかどうかに関係者は目の色を変えます。

 人づくり革命は教育改革の広範な意味がありますが、経済にフォーカスを絞れば高度人材をいかに 生み出し、また海外からいかに集めるかということがカギです。今国会で働き方改革法案が審議され、その中の高度プロフェッショナル制度が野党から過労死法案と本質を歪曲させるレッテル貼りがなされていますが、人口減少のドイツがEU一の成長を誇ったのも、イノベーションと働き方改革だと言われています。工業社会の初期は工場のラインに座っている時間と、生産量すなわち成果が直結していました。労働時間を伸ばすだけ生産つまり成果が上がる。労働時間=成果でした。しかし近年はデジタル経済と言われるように、サイバー空間のデジタルインフラをいかに活用し、リアル経済と連結するかの競争です。机に座っている時間と成果との関係が希薄な働き方が増えています。高度プロフェッショナル制度は年収が一千万円を超える高度人材に自由な働き方を選択肢として 提示しているのです。加えて時間拘束型に戻りたければ戻れる法案修正をしたわけですから、野党の反対理由は論拠がなくなります。

 1本目の柱が労働の切り口から生産性を上げる 手立てとするならば、2本目の柱の生産性革命はイノベーションの視点からの生産性向上です。IoT、ビッグデータ、AI、ロボットによる第4次産業革命を使って生み出す第5次社会(ソサイエティー5.0)はネット上のインフラとリアル経済活動をスマートコネクティッド(賢く連携)したものです。例えばアイコンストラクション。従来は測量士が設計図面を作り、それに則って作業員がブルドーザーで造成をするというものでした。今後はドローンが造成地の上空から3次元図面を作り、完成図面と合わせ、データが自動運転のブルドーザーに送られ、無人ブルドーザーが完成図面に向けて造成をしていきます。作業員は半分以下になりますから人手不足の中でも複数の現場が持てるということになります。第4次革命とは人材のスキルを上げつつ、人手不足に対応し、GDPを拡大していくというものです。

 

 

 

今週の出来事「落語友好議員連盟」

 フランスの国会議長一行が来日しました。日本・フランス友好議員連盟で歓迎の昼食会を開き、副会長の私も出席致しました。

  この種の会談ではお土産交換の儀式があります。お土産を受け取る際、フランス語で「メルシィ・ボク(ありがとう)」と答えますが、隣に座っていた野党の某ベテラン議員「甘利さん、お土産を受け取った時には『ウレシィ・ボク(嬉しい僕)』って言うんだよ」とアドバイス。(笑)

  そう言えばこの議員、以前ブッシュ大統領来日の際「ブッシュの弟、医者やってるらしいよ。ドクター・ブッシュって『やぶ医者』って意味だよね」と。

 お前、絶対職業間違えてるよ。(笑)