国会リポート 第346号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

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 先般、政府が発表した2兆円規模の政策パッケージは、2020年オリンピック・パラリンピックを見据えた3カ年のプランで、コンセプトは二本の柱から成り立っています。一つは、生産性革命であり、もう一つは人づくり革命です。生産性革命とは、第4次産業革命の基本ツールと言われる人工知能、IoT、ビッグデータ、ロボットを実装した企業が圧倒的に生産性を向上し、賃上げ原資を生み出し、企業業績の改善と賃上げの好循環を加速させるものです。人づくり革命は、3~5歳児の保育・幼児教育の無償化(0~2歳児の低所得世帯は無償化)と合わせ、高等教育については意欲と能力のある子供に家庭の経済環境にかかわらず平等なチャンスを与えるというものです。併せて一度社会に出た働き手が新たな能力を実装するためのリカレント教育への環境整備です。アベノミクスの次なる工程は、デフレ脱却宣言をし、2019年の消費税引き上げを乗り越え、オリパラに繋げていくという3カ年の間の次元を切った経済・人材強化策です。そしてアベノミクスの最終工程は、イノベーションが絶え間なく日本から世界へ発出する環境を造り出すことです。柱は大学改革です。

  国家予算は、政府が策定して自民党の協議に図りますが、税制度は伝統的に自民党が内閣の方針を受けて主導的に決定します。その自民党税制調査会は30人程度の幹部会と、その下にある全員参加の小委員会で構成されていますが、今や公然の秘密となりましたが、幹部会の上に(私もその一員である)6人で構成されるインナー会議というものがあります。そこで国税は財務省主税局、地方税は総務省税務局と議論をし、原案をまとめ幹部会、小委員会の手順で議論に附します。その手順を繰り返すことによって政府が考える改革の方向性と国民感情を擦り合わせていきます。

 12月14日木曜日に与党税制改革大綱がまとまると予算編成上の収入たる税収が固まります。来年度の収入見通しが固まれば、次は予算編成の与党内作業が本格化します。各種、議論を経て22日に閣議決定をし、来年度予算の政府原案が確定します。 今年の税制協議での目玉は

 1)所得税改革
 2)賃上げ税制
 3)中小企業の設備投資にかかる固定資産減税
 4)中小企業事業承継税制
 5)森林環境税
 6)観光振興税
 7)たばこ税などです。

 所得税改革は、基礎控除が38万円で全員一律である一方、サラリーマンの経費たる給与所得控除は、65万円をスタートに年収1千万円では220万円も認められています。

  一方、個人事業主にはその最低額たる65万円だけ。更に、子育てをしながらフリーランスで働いている人には給与所得控除が無いなど働き方によって同じ年収でも税制上の不公平が存在します。今回は、働き方による格差の是正、イコールフッティングを図ろうとするものです。

 いわゆる内部留保の内、投資に使われていない現預金は230兆円を超えました。これを賃金改善や設備投資やリカレント教育に積極的に活用した企業には一定割合法人税額を控除し、増益になっているにもかかわらず設備投資もせず、賃金を引き下げるような企業には租税特別措置を一部停止するというのも初めての政策です。

  中小企業の事業承継税制の改善は、関係者から満点の評価を頂いています。事業承継時に事業に係る一切の相続税を猶予し、やむをえず事業をやめたときにその時の評価額で納税を可能にしたものです。あわせて、複数人(3人まで)での事業引き継ぎも可能としました。

 

今週の出来事「血統値が高い?」

 ある企業人主催の原辰徳巨人軍前監督を囲む毎年恒例の忘年会が開かれました。甥の菅野投手も参加しましたが、本当に彼はテレビの印象通りのすがすがしい好青年です。甘いマスクからは厳しい野球人生を歩んできた野太さ感は伝わってきません。

「智之の父親は、東海大野球部の私の同級生なんですよ。鬼の原貢監督の娘(原辰徳氏の妹)にちょっかい出すんだから相当なもんですよ。(笑)」

  菅野投手の優しさは母(原監督の妹)から、外に見えないたくましさは父親から受け継いだんですね。(笑)