国会リポート 第308号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

総 覧

先日、総理の要請により総選挙後2回目の政労使会議が開かれました。経営側の代表である経団連会長、労働側代表である連合会長、政府側代表である総理、それに日商の会頭や中小企業団体中央会の会長、加えて労働側からは自動車総連やUAゼンセンの会長、政府側からは財務大臣や官房長官、経済産業大臣等、そして学識経験者数名が参加する重厚な会議で私が進行役を務めます。ここでは経済の好循環を回していくために政労使3者が果たすべき課題に取り組んでいくことを共通認識とします。

昨年末の会議で総理から経営側に企業業績を賃金改善や下請代金の改善に繋げていく要請を致しました。その結果、15年ぶりの改善となった昨年の賃上げをも上回る今春闘の回答が続いています。そこでその流れを中小企業に繋げていくために下請代金の改善策に合意をし、中小企業の賃金改善を後押ししていくもう一弾の取り組みを行ったわけです。昨年末以降、私の事務方が十数回経団連に足を運び、資材やエネルギー価格の上昇コストの分担のルールを元請けと下請けで取り決めるということに経団連側が踏み切ってくれました。経団連史上初めての試みです。

アベノミクスの成果を実感している人は2~3割程度にもかかわらず、安倍内閣の支持率が50%を2年以上維持しているのは「この道しかない」という総理の言葉を信頼し、見守って頂いているからだと思います。確かに誰がやっても抜けることの出来なかったデフレという経済の大病から15年ぶりに抜け出しつつあります。ここで動きを止めてしまったら坂の上まで押し上げていった荷車の手を離してしまうことに他なりません。谷底まで落ちていってしまった荷車をもう一度一から押し上げる体力は日本には残っていません。課題は中小企業であり、地方経済です。「大企業はいいけど中小企業は」、「大都市はいいけど地方都市は」、この課題に応えるべく好循環を全国津々浦々へと展開していくフェーズに入ろうとしています。「官製春闘」と揶揄される政労使の取り組みですが、私が例えて申し上げている通り、雪だるまは坂道を転げていけば自分で大きくなりますが、最初のひと押しふた押しは人為的にやってあげなければなりません。経済の好循環も最初のひと押しふた押しは政府の後押しが必要なのです。

4月3日に国立研究開発法人日本医療研究開発機構の除幕式と訓示式を総理ともども行いました。医薬品や医療機器の研究開発は今日まで厚労省や文科省や経産省がそれぞれ個別に行ってきました。それを統合し、無駄を省き、穴を塞ぎ、連携を強化し、基礎研究から企業の実用化まで一気通貫で繋げていくことが時代の要請です。三省から関連予算を剥ぎ取り、日本医療研究開発機構(AMED)が一元的に研究者に予算を配分する仕組みです。スタッフ300名は各府省と独立行政法人・大学そして企業から精鋭が集まってきています。理事長には慶応義塾大学医学部長の末松教授に就任頂きました。予算配分案件を選定する執行部会は外部識者にも参画をしてもらい、理事長以下数名で構成します。関係省庁から予算を剥ぎ取る行為を始め、政策実行力を持った本当の司令塔をわずか2年間でつくり上げるためには相当な腕力が必要です。総理が陣頭指揮を執り、官房長官や私で脇を固めて推進してきたこの構想は2年前に日本再興戦略で掲げた成長戦略の具現化の一つです。第3の矢がよく見えないという指摘を外国メディアからよく頂きますが、小手先の改革でない大改革としては最短距離で実行できたものと思います。医師とエンジニアが連携できる再生医療法や、安全を確認しつつ世界最速で実用化に結びつけることができる薬事法改正等、大胆な環境整備の下にAMEDの設立があります。

今週の出来事「週間、 じつは ・ ・ ・」

アベノミクスの成果たる経済指標をまとめた小さな手帳を高市総務大臣が閣議前に各閣僚に配布をしてくれました。各人からは

「(字が小さすぎて)老眼で見えない」

「見えてもわからない」

と言いたい放題。席に着いた総理は手に取るなり

「(若さのアピールで)見えてるふりはしなきゃ」 

私?『頭に入っていますから必要ありません。うん。(笑)』

 

そういえば花粉症で頭が冴えないこのシーズン、ある会合で

「今日は花粉症でぼーっとしているので皆さんの2倍ぐらいしか頭が回りません。」

とやってスタッフからヒンシュクを買いました。結構ウケてましたけどね。(笑)

 

ウケるといえばこの間創設した「日本医療研究開発機構」の看板は私が揮毫しました。

「甘利さんがこんなに上手いとは思わなかった。(安倍総理)」

ホントはパソコンの字をなぞったんです。(秘)