国会リポート 第307号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

総 覧

3月18日に自動車・電機業界を中心とする集中回答が出されました。同月20日には連合から第1回回答集計が公表され、賃上げ率は2.43%という結果でした。賃上げ率が15年ぶりに2%を超えた昨年の第1回集計結果2.16%を大きく上回っていることから、今年の最終賃上げ率が大いに期待されます。

もちろん、今後中小企業をはじめとした賃上げ回答が待たれるわけですが、このトレンドを繋げていくような環境作りが大切です。そこで総理は、近々政労使の3者による会議を再開し、経済好循環のフォローアップをしたい旨、表明されました。昨年末に開かれた政労使会議(投票日の2日後に異例の速さで開催されました)では、経済の好循環を回していくために、次期春闘での賃上げや下請け代金の改善、労働生産性の改善等の共通認識が確認されました。その後段部分、下請け代金の改善をしっかりフォローアップしていけば、中小企業の賃上げ環境もより整っていきます。もちろん、自動車・電機以外の大手企業にも積極的な取り組みを期待しています。

集中回答日にマスコミからぶら下がり会見(定例会見以外に役所のロビー等で行う臨時会見)にて、集中回答についての感想を求められました。点数をつけるとすれば、何点くらいつけられるかという質問に、「一次試験の結果は90点は差し上げられると思いますよ。」「二次試験で赤点がつかないようになりますか?」その問いは、まさにその回答が総理の発言の政労使会議の開催であり、経済財政諮問会議でのフォローアップです。今後、夏に向けて他業種や中小企業の春闘結果が発表されていきます。すべてが出そろうのは3,4か月先となり、出た回答は4月にさかのぼって実施されるということを考えてみれば、春闘結果が全て賃金に反映されるのは夏頃かと思います。そのころには実質賃金もプラスになってくるのではないかと大いに期待をしています。

野党のアベノミクスへの批判は、自分たちの政権の時には実質賃金はプラスであった、安倍政権になってマイナスになったという指摘です。賃金は厚労省の毎月勤労統計によって毎月前年同月比でプラスかマイナスかが確認されます。政権としては一人当たりではなくマクロの雇用所得、総雇用者所得と言っていますが、これを重視しています。景気回復局面にパートで短時間働く人が増えると、一人当たりの平均賃金が低く出るからです。月ベースでの比較をしてみれば、政権交代前2年間は24ヶ月間の内、9ヶ月間は実質マイナスでした。安倍政権になり、消費税引き上げまでの15ヵ月間は実質がマイナスになったのは4ヶ月間だけであります。消費税を引き上げればその分、物価はさらに上がるわけですから、当面は物価高を差し引いた実質総雇用者所得はマイナスになります。しかし、アベノミクス効果により、消費税分を引いた実質総雇用者所得は3ヶ月後にはプラスになり、その後は消費税分を加えた物価高を差し引いても、マイナス幅は小さくなり続け、今年の一月では速報値ではついにプラスになりました。これに今春の春闘の賃上げが加算されれば、物価高を乗り越えた賃上げが定着していき、野党が最大問題と指摘する一つが解消に向かうはずです。

さて、懸案のTPP交渉の期限がいよいよ迫ってきました。来年11月に行われるアメリカ大統領選挙は長期間の予備選を含めたキャンペーン期間を考えれば、今秋の内に全ての作業を終わっておく必要があります。アメリカの議会手続き等を勘案すれば、合意のための12ヶ国閣僚会議は春には開催される必要があると言われ続けてきました。春の範囲がどこまでなのかという議論もありますが、交渉を終結するための必須要件が米国のTPA法案(貿易促進権限法案)です。まとめた内容全体にイエスかノーで議会が答えるという法案が成立しなければ、まとまった交渉内容に米国から修正が要請され、その時点でTPPはとん挫すると言われているからです。民主党オバマ大統領が自身にとっての最重要案件と言っている以上、膝元の民主党の反対(野党共和党は賛成しています)を説得する責任があります。

今週の出来事「他田引水?」

このところ全国で、続々と高速道路の開通式が行われています。私の地元でも長年の課題であった圏央道のインターチェンジが次々と開通し、どんどん交通アクセスが良くなっています。 
総理のお膝元山口県では、山陽側つまり瀬戸内海側の道路は大都市を繋ぐ性格上整備が進捗していますが、山陰側すなわち日本海側は密集度の少ない地域のため遅れがちです。総理の選挙区は、山陰側となっているため当然遅れています。

支持者からは、 
「お父さんが生きていればなぁ。」 
「・・・・。(私、総理大臣なんですけれど。)」

 

いかに、公平無私の総理か、だよね。(笑)